GEでは社内政治を「影響力」として評価

ゼネラル・エレクトリック(GE)では、社員に対して、与えられた権限だけでは達成できない高い目標を課している。与えられた権限を使って達成できる目標はたやすい。それは誰にでもできる仕事だ。高い目標を超えるには、権限とのギャップを補うための力を働かせる必要がある。同社ではそれを「影響力」と定義して、リーダーシップの評価に組み込んでいる。

GEが「影響力」と呼んでいるインフォーマルな部分とは、ポリティクス(社内政治)にかかわる領域も含んでいる。ギブ・アンド・テークの関係がもてる仲間がいるか。他のチームを自然に巻き込んでいけるか。上司に働きかけて有利な環境をつくっていくことも、影響力の1つだ。

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出世のために社内政治は必要か?

確かに組織には「茶坊主」と呼ばれる人々も存在する。しかし、多くの「大物」もまた組織の政争をしのいでその地位を得、実力を発揮してきた。ゴマすりを毛嫌いすることは個人の価値観だが、組織とは合理性で動くロボットではなく、「褒められるといい気持ちになる」人間が動かしていることを考えれば、ゴマすりを含めたインフォーマルな影響力の価値は大きい。「正しいこと」にこだわることは一見潔いが、もしかしたら本当に達成したいものがないのかもしれない。

「正しいこと」にこだわり続ければ、組織の中で出世するのは難しいだろう。その姿勢を貫くのであれば、自分で事業を興したほうがいい。経営者として事業を差配するのであれば、顧客に買ってもらえるかどうかが絶対的な指標となる。そのとき、顧客へのゴマすりが実力といえるかどうかは、本人の考え方によるだろう。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授 
清水勝彦

1986年東京大学法学部卒、94年ダートマス大学MBA、2000年テキサスA&M大学経営学博士。
(構成=大山貴弘)
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