たった「ひと言」の相互理解に必要なこと

「ひと言」で伝えたとき、果たしてその「ひと言」は、相手にとっても同じ意味が含まれているのかを考えてみると、噛み砕いて伝える術になり、逆に自ら確認すべき点にもなる。  
たとえば今や日本人の多くが知るPC(パーソナル・コンピュータ)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の“略語”は、英語圏では意外にも一般に広くは使われていない。そのため日本人にあたりまえのPCやSNSも、言い方を変えたほうがいい。つまりこれと同じで、自分にとっての“当たり前”が通じないということが起こっているのだ。

まずは、「相手が誰か」「自分の言葉は共通の意味を有するか」を確認することが必要だろう。

伝える前に:相手は誰か、どんな業種か、その言葉は果たして共通の意味か。

伝えた後に:「ひと言」に含まれている案件や項目それぞれを説明しつくせたか。

こうした「自分だけがわかっている可能性」をつぶしていけば、「なぜ伝わらないのか」といったストレスを防ぐことにも、私のような不手際を防ぐ良作にもつながるはずである。映画『プライドと偏見』の原作者ジェーン・オースティンはこう語っている。

「あなたがスゴイと思うことでも、世の中の半分の人は理解できないものだ」(*2)

つまり、自分が思い込んでいることは、実は狭い世界でしか通じない概念かもしれないというわけだ。自分の表現を疑って「ひと言」の意味を説明してみれば、お互いの考えを余すとところなく共有することにつながるだろう。

[参考資料]
*『人間社会情報科学入門』情報技術と認知・感情・コミュニケーション pp193 (関本英太郎監修 東北大学出版会)
*2『コトバのギフト -輝く女性の100名言』 (上野陽子 2013年 講談社)

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