聞き手が、情報の意味と価値をつくる

以前にも書いたが、言葉の意味するところは、受け手の「特殊概念」でとらえられる。つまりは自分の手の届く範囲で知っていることから回答をみつけて理解する。だから、お互いがいる環境が違えば、その“通常”も違ってくるだろう。

この違いは「伝える」と「理解する」の段になると、あきらかに互いに情報不足と理解不足の齟齬となってしまう。「当然」と考えても、それは自分の仕事の範疇だけで通じる話かもしれない。

東北大学の邑本俊亮教授は「情報は、それ自体が意味を持っているわけではない。情報の受け手がそれを受け取ったときに意味が生じるのである。そして、受け手がそれをどのように受け止めるのかによって、情報の意味や価値が異なってくるということなのである」(*)としている。

自分の業界や、関連業種のみで伝わる言葉や習慣は、思う以上にたくさん存在する。一歩外へ出たらまったく解釈が違うことも多いものだ。上記は「含意の違い」の例ながら、こんな「意味の違い」も起こるかもしれない。

たとえば「わが社のIPPはEPCに変わる……」と話をするなら、理解できるのはその事業に携わっているか、業界の人間に限られる可能性が高いだろう。

新聞や雑誌の記事をみるとわかりやすいが、「わが社のIPP」と書いたら、(独立系電力事業 Independent Power Producer)のように、その意味を添えていく。読み手によって「IPP」は総合的製品政策(Integrated Product Policy)や知的財産保護(Intellectual Property Protection)かもしれないからだ。