新聞の見出しは「給与引き上げ」に集中した

結局、「給与を上げろ」という霞が関の誰もが喜ぶ結論に終わった。だが本当に、キャリア官僚の給与を大企業並みにすることが「国家公務員離れ」の解決策なのだろうか。

人事院の有識者会議である人事行政諮問会議(座長・森田朗東大名誉教授)がこのほど最終提言をまとめた

国家公務員のなり手不足解消に向け、人事院の川本裕子総裁(右)に提言を手渡す人事行政諮問会議の森田朗座長=2025年3月24日午後、東京都千代田区
写真提供=共同通信社
国家公務員のなり手不足解消に向け、人事院の川本裕子総裁(右)に提言を手渡す人事行政諮問会議の森田朗座長=2025年3月24日午後、東京都千代田区

これを報じた新聞各紙の見出しはこうだ。

◇朝日新聞 「キャリア官僚給与『大企業並みに』有識者会議、人事院に引き上げ提言」
◇読売新聞 「キャリア官僚の給与、『大企業並み」に引き上げを提言 優秀な人材確保しやすく」
◇日本経済新聞 「キャリア官僚らの待遇上げ提言 給与比較は『大企業と』」
◇毎日新聞 「国家公務員の人材確保『危機的状況』人事院の有識者会議が提言」
◇東京新聞 「給与増へ官民比較見直しを提言 国家公務員のなり手不足解消へ」

こんな具合に、国家公務員の志望者減少や、若手職員の離職増加といった「危機的状況」を打開するには、給与を大企業並みに引き上げることが切り札だと、提言内容を総括して報じている。報告書は給与引き上げだけを解決策として提示したわけではないのだが、結局、新聞の見出しは「給与引き上げ」に集中した。

「公務が危機に瀕している」は本当なのか

人事院は毎年夏に、国家公務員の人件費の増減を政府に勧告し、政府は基本的にこれを受け入れる。いわゆる「人事院勧告」を出す役所だ。トップの総裁はコンサルタントや早稲田大学大学院教授を務めた川本裕子氏が務めるが、スタッフの大半は霞が関の一員である公務員が占める。要は政治に介入されずに自分たちの給与水準を決めるための仕組みだ。これまでも人事院勧告での給与引き上げ率は「民間並み」と言いながら、中小企業から見れば羨ましい賃上げ、待遇改善を求め、実現してきた。今回の提言を受けて、大きな収益を上げている民間大企業並みの給与引き上げを、堂々と勧告できることになるのだろう。結局、国民感覚からずれた我田引水の提言になった。

「公務が危機に瀕している。公務の危機は、国民の危機である」

いきなり、こんなフレーズから提言は始まる。

本当にそうなのか。人口が本格的に減少し始めている中で、これまでの肥大化した「公務」を維持していく必要があるのか。そのために、給与を引き上げれば、増税など国民負担を増やすことになるが、それを国民は受け入れられるのか。