なんでも否定する人は「表現」に失敗している
まず準備体操です。言葉を発する際、表現(expression)と表出(explosion)があります。「表現」の目的は聞き手にインプレスする=納得させること。「表出」の目的はエネルギーの発露で、話し手は「気分スッキリ」しても聞き手は納得せず、相手をその気にさせるコミュニケーションとしては失敗です。赤ちゃんが泣くのは「表出」で、言葉を学んで成長すると「表現」を身につけます。
全否定する人は、大人になり切れない「育ちが悪い人」。文化もあります。アメリカ人はまず相手の話を否定してマウントを取ります。先に橋頭堡を確保して「お前もファイティング・ポーズを取れ」と誘う。ドイツ人は相手に喋らせ「要はこういうことですね」と要約してコメントをつける。「謙譲は美徳」の日本人はこちらを好み、「ファイティング・ポーズ」を取ると、偉そうで大人げない人に見られます。
そこにディベートのヒントもあります。ポイントはテクスト(言葉)とコンテクスト(文脈)の区別。コンテクストの語源は「言葉に伴うもの」。ここでは言葉を喋る態度(アティチュード)です。勝ち負けのコミュニケーションでは、何を言うか(テクスト)より、どんな態度で言うか(コンテクスト)に注目しましょう。「単なる感想だね」がマウント取りの典型ですが、そう言われたら、怯まずに「その通り。まず感想を話してから本題に入ります」と返せば、マウント取りに失敗した相手が戸惑うのを観察できる。こうして相手のジャブを受け流して論理で反論します。
暴力の喧嘩と同じで、百戦錬磨の人は威嚇にビビりません。どんなに準備してもビビったら有効な論理は使えません。議論も同じで、「弱い犬ほどよく吠える」を思い出しましょう。ここでも「表現」と「表出」の違いが大切です。相手を論破しかけても、ダメ押しには慎重であるべきです。相手を追い詰めると、理が通っているこちら側が「表出」にかまけた形になり、ギャラリー(聴衆)の印象が悪化して、それを見た相手が勇気を得ます。高校生の僕は父から「追い詰める手前で黙れ。お前は徹底的にやるから組織人に向かない」と言われました。「朝まで生テレビ!」で故・西部邁さんと議論し、西部さんが怒って退席しました。「宮台は理屈で勝って動機づけで負けた」「西部さんのほうがいい人だから好き」と多くの人に言われ、反省しました。
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