まさに流通業界の下剋上
トライアルの躍進は2001年からの九州地区小売業上位企業の変遷図を見るとよく分かります。
2001年には九州の小売業上位20社にトライアルの名前はでてきません。2000年度の売上高は約113億円です。
しかし06年になると突然九州地区8位に登場し、11年には一気に九州地区で2位、その後も九州地区では2位の座を守り続けています。直近の売上高は7179億4800万円なので、20年ほどで売上高は63.5倍も上がったことになります。
今回の西友買収で、九州地区では一気に1位になる予定(24年度の西友の売り上げを加えると単純計算で売り上げは約1兆2000億円。九州1位のコスモス薬品の25年5月期年間売上予想が1兆370億円のため)です。
しかも、もともとリサイクルショップとしてスタートしたトライアルが、一時期は流通業界のトップグループ企業だった西友を買収するのです。まさに流通業界の下剋上です。しかし、両社の記者発表などを見るにつけ、トライアルはもとより西友側も非常に前向きな買収として受け止めているように見えます。それはなぜなのでしょうか。
90年代後半から金融危機と景気低迷で節約志向が高まり、日本にもディスカウントやEDLPの波が押し寄せました。その中で西友がウォルマートと手を組んだこと自体は間違っていなかったのです。
02年にウォルマートと包括的業務提携をした際に、一気にウォルマートのEDLP化を進めていれば、また違った結果になったかもしれません。
ウォルマートとの意外な関係
しかし08年に子会社化していくまでの間に、日本ではドン・キホーテやスーパーのオーケー、ドラッグストアの大量出店など、さまざまなディスカウントストアに先を越されてしまいました。トライアルも2000年代前半に大きく伸びた一社です。
そのトライアルがベンチマークとしたのが、まさにウォルマートなのです。
ウォルマートを徹底的に研究し、ウォルマートの経営スタイルをモデルに店舗展開などを進めてきたのです。その結果、トライアルは見事にトライアル流のビジネスモデルを確立し、ウォルマートの子会社だった西友を自社に取り入れることに成功しました。
外から学んだトライアルと実際にウォルマートの傘下で経営されていた西友。この両社が融合することに違和感はないし、逆に組み合わさることで相乗効果が発揮される可能性は高いと言えるでしょう。
両社にはウォルマートという世界のトップ小売業の存在が大きく影響していたのです。
今後、西友を取り込んだトライアルは、どんな戦略にシフトするか?
歩調が合うとはいえ、これからトライアルは3つの課題に直面することになります。