日本の流通小売業を牽引する存在だったが…
現在は買い手であるトライアルばかりに注目が集まっていますが、もともと西友という会社の方が知名度もあり、流通業界の中で知らない人はいない存在でした。
1963年に「西友ストアー」として誕生。69年には他社に先駆けて本格的な物流センターを東京の府中に開設。78年にはフランチャイズ・システムによりコンビニのファミリーマート事業をスタートさせています(現在は伊藤忠商事子会社)。
79年に上場。80年には日本ではまだ珍しかった流通小売業のプライベートブランド(PB)商品である無印良品を生み出しました。
2000年に日本初のネットスーパーを作ったのも西友です。当時の西友は、時代に先駆けて最新時流を取り入れ、ファミリーマートや無印良品を生み出すなど、まさにセゾングループの中核企業ならではの先進性で、日本の流通小売業を牽引する存在だったのです。
とはいえ、業績・財務状況は1990年代後半のバブル崩壊からじわじわ悪化。米国のウォルマートと2002年に包括的業務提携を結び、セゾングループらしい「ちょっと良い暮らしを提案する」店から「EDLP(エブリデーロープライス)」業態へとシフトしていきました。
08年に米・ウォルマートの完全子会社になっても業績は改善されず、楽天とネットスーパーで協業したり、新たなPB商品を作りだしたりしていきましたが、結果的に良い成果は生まず、売り上げは減少していきました。
元リサイクルショップが急成長したワケ
21年にウォルマートは西友株式の多くを米ファンドKKRに売り、日本市場から撤退しました。西友の行方が取りざたされ始めたのはこの頃からです。
01年の西友の売り上げは1兆711億円(01年2月期、5%増)で、日本の流通小売業界でもトップ10入りしていたのですが、18年になるとそこからも外れてしまいます。その後、九州や北海道の店舗を他社に売却し、首都圏を中心にした店舗構成へと集約していきました。
一方のトライアルHDの創業は1974年。福岡市に古物商、リサイクルショップとして「あさひ屋」を開業したのが創業です。84年にトライアルカンパニーに改称し、小売店向けのPOSシステムなどのシステム開発の受託を行うようになりました。当初から自前でデジタル化を進めていた会社だったわけです。
92年にトライアル1号店を開店(現在は閉店)し、96年に当時、米国で拡大していた「スーパーセンター」という数千坪という大型の売り場面積でさまざまな商品をディスカウント販売する形態の1号店を北九州市にオープンします。
そして同社が成長する起点となったのが、01年から始まった居抜き物件への出店です。
これは投資も抑えられ、内装に手を加えれば新規出店が可能です。急成長をしたい流通小売業の常套手段といえます。
トライアルは九州を地盤にしながら、高度経済成長期に広がったGMS(総合量販店)撤退後の空いた物件に入居する形で出店を続け、一気に成長企業へと進化していったのです。