熱気に包まれた3月4日の米国議会

3月4日の米国議会は、トランプ大統領の施政方針演説で熱気に包まれた。「America is Back(米国は戻ってきた)」。演説の冒頭トランプ大統領がこう述べると、共和党議員は立ち上がり、「USA! USA!」と言う掛け声が続いた。100分にわたる演説は刺激的な言葉に溢れ、共和党議員のスタンディング・オベーションが繰り返された。まさにショーそのものだった。

「わが国は世界がこれまで目にしたことがない、そしてこれからも目にすることがないような復活を果たそうとしている」

トランプ大統領はバイデン政権やその政策をこき下ろす一方、就任以来の43日間で「ほとんどの政権が4年または8年で達成した以上のことを成し遂げた」と自画自賛した。その中のひとつとして、歳出の削減を進める政府効率化省(DOGE)を設置したことを挙げ、DOGEを率いるイーロン・マスク氏を紹介。議場でマスク氏が立ち上がると、共和党議員から大きな歓声が上がった。トランプ大統領はDOGEがすでに18の無駄な事業を確認したと指摘。こう述べた。

2025年3月4日、連邦議会下院本会議場で行われたドナルド・トランプ大統領の演説で、イーロン・マスクが表彰される。
写真提供=CQ Roll Call/ニューズコム/共同通信イメージズ
2025年3月4日、上下両院合同会議でのイーロン・マスク氏。

「あまりにもひどいことだ。ほかにも多くのことがイーロンが率いる非常に賢い主に若い人たちによって発見され、世にさらされ、迅速に停止されている。われわれは数千億ドルを発見し、インフレなどとたたかうために金を取り戻し、借金を減らした。これは始まりにすぎない」

「基本的な職務の遂行ができなくなっている」という悲鳴

DOGEは大統領令によって設立された非公式の特別調査チームで、トランプ大統領が主張する政府の「過剰な支出」や「資金の不適切な運用」を根絶するとしている。すでに複数の連邦機関の改革に乗り出し、官僚機構との間に激しい摩擦が起きている。2月には教育省への調査に入り、軍も例外ではないとした。トランプ大統領は「我々は数十億、いや数千億ドル規模の不正と浪費を発見することになる。人々はそれを期待して私を(大統領に)選んだんだ」と豪語した。

マスク氏は当初、年間2兆ドル(300兆円)の無駄な予算の削減をぶち上げていた。米国の政府支出は8兆ドル程度とされ、現実にその4分の1を削れるかどうかは微妙だが、そうした抜本的な政府の無駄排除が有権者の支持を得ている。

マスク氏は、1月20日の発足直後から、連邦職員の大量解雇や米国再開発局(USAID)の解体、各省庁が持つ機密データへのアクセスなどを求めてきた。また、DOGEは2月中旬に突如、職員が経費支払いなどに使っていた政府のクレジットカードの限度額を1ドルに設定、事実上、凍結した。出張や機器の注文ができなくなり、基本的な職務の遂行ができなくなっているという悲鳴が上がった。