日本版GPS:測位誤差は数センチに。アジア各国にも拡大へ

日本独自の人工衛星複数を用いた「日本版GPS」のシステム構築が、国策として推進されている。2011年9月の閣議決定を経て、12年7月、国の宇宙政策の新たな司令塔となる「宇宙戦略室」が内閣府に発足した。従来、各府省で縦割りだった宇宙政策を横断的にまとめあげ、推進する権限を持つ。日本版GPSも宇宙戦略室が中心となって開発、整備、運用を実施する。また、すでに10年9月には、日本版GPSを実現する人工衛星群の初号機となる準天頂衛星「みちびき」が打ち上げ済み。関係省庁による技術実証、衛星測位利用推進センター(SPAC)による民間の利用実証が始まっている。

初号機の「みちびき」/打ち上げは2010年9月。1基だけでもGPSの補完機能があり、今後、対応機種が出る予定。(JAXA=提供)

現在カーナビ等で位置の測定に利用されている「GPS(Global Positioning System)」は、米国が打ち上げた約30基の人工衛星の発する測位信号(電波)で全地球をカバーする。同様のシステムは、EU、ロシア、中国も開発を進める。これに対し、日本のシステムは、地上から見ると日本からオーストラリアまで南北に「8」の字の軌道を描く「準天頂衛星」を利用し、日本とオセアニア周辺地域だけをカバーする。必要な衛星の数が少なく、経済的メリットが大きい。

日本の衛星は、米国と共通の信号に加え独自の補正信号も発信。天頂(真上)近くに衛星が約8時間、滞在するため、山間部やビル街でも測位しやすくなるほか、現在約10メートル以内とされる測位精度を1メートル以内、もしくは数センチにまで高め、信号の信頼性も向上させる。

農業や物流、災害対策など応用範囲は広い。測位信号に含まれる時間情報もより正確になるため、時刻合わせに使う意向を持つ時計メーカーもあるという。政府は、エリア内の各国にも利用を働きかける考えで、「幅広い産業分野に展開可能な情報インフラができる」(宇宙戦略室・青木幹夫企画官)。

計画では、10年代後半を目途に「みちびき」を含む計4基の打ち上げを完了。エリア内で常時1基以上の電波を受信可能にして、米国のGPSを補完することから始める。その後、日本のシステムのみで測位可能となる7基以上に増やすことを目指す。