海上メガコロニー:赤道直下に5万人居住。目的は「技術革新」
赤道直下の海の上に5万人が暮らす「街」を浮かべる。清水建設が、そんな夢のような計画を立てている。
「グリーンフロート」と呼ばれるこの海上メガコロニー構想は、高さ1000メートルのタワーを浮き島に建設し、ゆっくりと移動する直径3000メートルの人工島を作り上げるというもの。島では自給自足を目指し、太陽光発電などあらゆる自然エネルギーを利用することで二酸化炭素の排出はゼロに。赤道直下であるため、人が居住する高度700メートル以上のエリアの気温は27度前後と一定で、冷暖房の必要もない。階下では各高度の温度に合う食物を育て、5万人分の食料に充てる。同構想には産学協同に取り組む「スーパー連携大学院」と野村証券が参画し、隔月の研究会には250の企業、80人の研究者が集まり議論が交わされている。
野村証券で産学官連携を進める平尾敏さんは、構想の裏で進む技術革新にこそ、重要な意味合いがあると話す。
「2025年の着工、30年の完成というロードマップを描いていますが、我々が着目しているのは、実はグリーンフロートの完成を目指していく過程そのものなんです。そこから出来上がる様々な技術を、ビジネスに活用する。例えば5万人が常に利用するエレベーターを実現するには、今よりもずっと軽い素材が必要になる。そこでいまマグネシウム合金を使ったエレベーターの開発を進めています。軽量化への研究が進む過程で、世界中に新しいエレベーターを売ることができるわけです」
あるいは食料の栽培技術もその1つ。
人工島では水田による稲作が困難であるため、砂耕栽培で米を作る研究が必要となる。すでにある大学では技術が確立され、別の研究を組み合わせることで砂耕栽培での3期作も可能になっているという。同技術は砂漠地帯での米栽培に応用できるものだ。
その意味では克服しなければならない課題は多ければ多いほどいい。自然エネルギー、植物工場や海洋牧場、それを可能とする新たな素材……。平尾さんはいう。
「グリーンフロート構想が日本の産業を土台から支えることを期待します」