世界一の大投資家バフェットが、福島県いわき市にあるタンガロイの新工場の竣工式典に出席した。バフェットも「働いてみたい」とする驚愕の生産システムの全貌が明かされる。

ハンバーガーは野菜抜きで味付けなし

上原好人 タンガロイ社長

2011年11月、福島県いわき市の私たちタンガロイの新工場完成式典に、世界一の大投資家で、大富豪ウォーレン・バフェットさんに出席していただきました。バフェットさんは、タンガロイの親会社IMCの大株主です。

羽田空港までお迎えにいき、そこから車での移動をご一緒させていただいたのですが、私たちのようなメーカーと、バフェットさんの住む投資家の世界は全然違うせいか、あまりビジネスの話はせず、食べ物のことばかり話していました。

バフェットさんがかなりの偏食家だということは耳にしていました。車中で 「あなたは、本当にハンバーガーしか食べないのですか?」と聞いてみたのです。そうしたら「日本食もチャレンジしてみるよ」と笑うのです。

バフェットさんの自伝『スノーボール』にも載っている有名な逸話があります。ソニーの当時のトップだった盛田昭夫さんが、ニューヨークの自宅にバフェットさんをお招きしたんです。バフェットさんは、次から次に出てくる日本食20品に一切手をつけなかった。この逸話をみんな知っているので、バフェットさんは、挑戦してみるなどとジョークを言ったのです(笑)。

事前の情報で、バフェットさんは、ある種類のハンバーガーとある種類のコーラしか召し上がらないと知ったので、式典のときの食事はずいぶん変わったものになりました。

ハンバーガーも、ハンバーガーであればいいのではなく、マクドナルドのクォーターパウンダーがいいみたいです。しかも、本来ならレタスやピクルスやチーズなど、肉以外の具材もたくさん入っているはずなのですが、それを全部抜いてしまって、ソースも味付けも一切なし。完全にパンで肉を挟んだだけのものです。それを200個ほどマクドナルドに注文しました。コーラはものすごく甘いチェリーコークだけを、1日に何本も飲むとのこと。チェリーコークは、日本の小売店で売っているお店が少ないので、ネットで探してなんとか手に入れました。

バフェットさんとは今回の来日で、3回ほど食事の機会がありましたが、サラダ、魚、肉と私たちが食べている料理には目もくれず、特注のハンバーガーをずっと食べていました(笑)。