資生堂が外部から人事部長を招き、グローバル化のための大改革にとりかかった。適時・適材・適所と後継育成を可能にする「タレントマネジメントシステム」、脱・年功序列……。これまでになしえなかった改革を、とてつもないスピードで実行しようとしている。
末川社長も学んだ少数精鋭のグローバル研修
「マネーはコモデティ化し、多くの企業にとって資金集めはもはや大きな問題ではない。真の戦いは人材の獲得にこそある」――。こう喝破したのは『ビジョナリーカンパニー』の著者であるジェームズ・C・コリンズだった。
ましてや韓国・中国企業に押され、日本企業の技術や商品は陳腐化・コモデティ化しつつある。その中で競争力の源泉が“人材”にあることに気づいた日本企業が、本格的なグローバル人材の獲得と養成に舵を切り始めている。それは旧来の国内および日本人を中心とする同質・年功的な序列体系を大胆に変革し、世界規模での人材の獲得・育成と登用を目指す人材の無国籍化である。
化粧品最大手の資生堂も、人材のグローバル化に着手した企業の一つだ。2011年4月の末川久幸社長の就任以来、グローバル経営を一気に加速している。同社の2011年3月期決算の海外売上比率は42.9%。世界の88の国と地域でビジネスを展開している。今後も中国を中心に海外市場でのシェアを高め、17年には「日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレーヤー」になることを目指している。
今年4月1日付で06年に招聘したグローバル事業担当のカーステン・フィッシャー取締役執行役員専務を代表取締役に昇格させる人事を決めている。
また、成長の柱と位置づけるグローバルリーダーの養成を含む人材マネジメントの構築を担当するのが、11年4月に日立製作所や米GE、HPを経て同社の執行役員人事部長に就任した大月重人氏だ。日本の伝統的名門企業で外部から人事部長を招聘するのは、極めて異例のことだ。それまで日本企業がなしえなかった人事制度の抜本的改革への本気度がうかがわれる人事といえる。
人材のグローバル化を実現するための最大の課題は、適材適所のマネジメントシステムの構築だ。
「適材適所というより適時・適材・適所の配置の仕組みをつくり上げることです。外国人の役員を出すことが目的ではなく、その仕組みの中で日本外からビジネスを代表するような役員や幹部が輩出されてくるのは必然だと考えています」(大月人事部長)