これに対してロシア軍には、こうした組織的な検証の仕組みが存在しない。その結果、兵士の犠牲者が増え続けているにもかかわらず、同じような戦術を漫然と繰り返す事態が続いているという。
最新型戦車の失敗を受け、ロシアは逆に旧式戦車の投入という選択を迫られている。ナショナル・インタレスト誌の報道によると、ロシア軍はソビエト連邦時代の1960年代に製造された、T-
フォーブス誌はT-62について、「仮に使い物になるとしても、1980年代の基準でかろうじて、という程度だ」と手厳しい。
T-62はロシア軍の精鋭部隊である第1親衛戦車軍にも配備され、窮状を象徴している。同部隊には当初、最新鋭のT-14アルマータ主力戦車が配備される予定だった。だが、実際には旧式のT-62戦車で戦力の補充を行っている。ナショナル・インタレスト誌は「この事実こそが、ロシアの置かれた切迫した状況を如実に物語っている」と結論付けている。
国際社会と断絶するロシアの急所が露呈した
ロシア軍の装備不足は、もはや取り返しのつかない段階に達している。開戦時に誇った世界最大規模の戦車部隊は、わずか2年で半減した。その補充のため、60年前の旧式戦車から民間車両、さらには馬までもが戦場に投入される異常事態となっている。
根本的な問題は、ロシアの軍需産業が抱える構造的な脆弱性にある。冷戦時代から続く技術面での立ち遅れは、西側諸国による経済制裁によってさらに深刻化した。特に精密機械や電子部品の不足は致命的だ。これは一朝一夕には解決できない課題だ。
組織としての学習能力の欠如も見過ごせない。米軍のような戦闘後の徹底した検証プロセスを持たないロシア軍は、同じ失敗を繰り返している。この問題は、装備の質と量の不足と相まって、戦場での犠牲をさらに増大させている。
こうした複合的な問題を抱えるロシア軍が、近い将来に装備面での立て直しを図ることは極めて困難だろう。むしろ、時間の経過とともに状況は一層深刻化すると予想される。単なる軍事的な課題を超えて、ロシアの国家としての持続可能性にも影響を及ぼす事態が考えられよう。