戦車がいなくなったロシア軍基地も

ウクライナのキーウ・ポストは、衛星写真の分析を基に、ロシアの戦車備蓄が底をつきつつあると報じている。ロシアは開戦時、大小24カ所の基地に計7300台の戦車を保有していた。しかし2024年末までに、11カ所の基地が完全に空になり、残りの基地でも保有台数が半分以下まで減少したという。

最も顕著な例として同紙は、極東地域・アルセーニエフ村近郊の第1295中央戦車修理保管基地の変化を挙げる。2021年の衛星画像では、同基地に約300台の戦車と400台の装甲車両が確認され、その半数近くが実戦可能な状態だった。

ところが、公開情報分析(OSINT)専門家のジャンピー氏が2024年12月に公開した衛星画像では、状況が一変していた。新型車両は姿を消し、砲塔を失った戦車の残骸だけが残されている。現在、この基地で使用可能な車両は全種類合わせても約100台で、そのうち主力戦車は10台に満たない。

この事態についてジャンピー氏は「この基地は事実上、その役目を終えました。完全に空になるまであと1、2カ月でしょう」とコメントしている。

最新型戦車は「致命的な設計ミス」で役に立たない

ロシアは最新型戦車の投入も試みているが、その結果も芳しくない。米軍事専門サイト「1945」によると、最新型主力戦車T-90Mが、ウクライナ戦争で壊滅的な被害を受け続けている。この戦車は125mm砲や高性能エンジンなど最新の技術を投入して開発されたにもかかわらず、致命的な設計上の欠陥があることが次々と判明している。

同サイトは最大の問題点として、自動装填システムの採用を挙げる。従来は人手で行っていた弾薬装填を自動化したため、弾薬を砲塔付近、すなわち防護が不十分な場所に置かざるを得なくなったという。この致命的な設計ミスにより、自爆ドローンや対戦車ミサイルが上方から攻撃を仕掛けただけで、戦車ごと爆発する事態が相次いでいる。

精鋭部隊に配備されたのは、「親の世代よりも古い」戦車

作戦遂行面でも深刻な欠陥が表面化している。同サイトは、アメリカ軍とロシア軍の根本的な違いとして、戦闘後の検証作業の有無を指摘する。

アメリカ軍では「アフターアクション・レビュー」と呼ばれる検証会議を徹底しており、戦闘後に全将兵が参加して作戦の成否を詳しく分析する。この検証から得られた教訓は、その後の作戦立案や戦術の改善、さらには将兵の安全確保に向けた新しい戦闘手法の開発にも生かされているという。

先の大戦で鹵獲されたロシア製T62戦車は再建され、IDF機甲部隊で運用された。
ロシア製T62戦車(写真= Israel Press and Photo Agency/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons