自分の意見を通したいとき、どんな言葉遣いに気を付けるべきか。司法試験をはじめとする法律資格受験指導校「伊藤塾」塾長の伊藤真さんは「なんとなく情に訴えることはやめて、二元論で考える練習をしよう。法律の世界では『IRAC(アイラック)』という論法がある」という――。

※本稿は、伊藤真『考える練習』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

ビジネスマンの会議
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頭のいい人が使っている「IRAC」とは?

法律の世界で重要なのは、「結論」と「根拠」だと書いた。さらにもうひとつ重要なのは「IRAC(アイラック)」である。

耳慣れない単語かもしれないが、これは法律家が日常的に使っている考え方で、いわゆる世の中の「頭のいい人」たちは無意識のうちに行っているアプローチである。これまでずっと、私が伊藤塾で教えている考え方でもあり、法律の場面に限らず、どんな場面においてもひじょうに役に立つと思っている。

「IRAC」とは、次の頭文字から来ている。

・「I」…… Issue(問題点、課題)
・「R」…… Rule(規則)
・「A」…… Application(あてはめること)
・「C」…… Conclusion(結論)

何が「問題」なのかを明示し、その問題を解決するための「ルール」は何かを示し、今回の事件はどういう事実なのかその事実をルールに「あてはめて」、「結論」を導き出す。

別の言い方をすると、課題に対して、「ルールという大前提」「アプリケーションという小前提」「結論」という、「法的三段論法」となる。

一つずつ当てはめていくと結論を導き出せる

たとえばIssue、問題点、問題提起でいえば、「この人を殺人罪で処罰すべきか」が、これに相当する。

Ruleは、人を殺した者は処罰されるべきだという法律、刑法である。

Applicationでは、人を殺したということをルールにあてはめる。すると、この被告人は処罰されるべきだというConclusion、結論になるわけだ。

こうやって、事例をあてはめていくとわかりやすいだろう。

この「法的三段論法」にあてはめると、人を殺したものは処罰されるというルールという大前提があって、この被告人が人を殺したという具体的な事実、小前提があって、それをルールにあてはめると、よってこの被告人は処罰されるべきだという結論が導かれる。

「判決文を読むときはIRACを意識せよ」「法律的な文書を書くときはIRACにのっとって書くように」というように、伊藤塾ではIRACを大事にし、これを徹底的に教えている。