アナリストたちに、いま注目の企業を選んでもらい、それらの会社が快進撃を続ける理由について解説をしてもらった。不利な市場環境でも利益を生み出す戦略やビジネスモデルとは、どのようなものなのだろうか。
取引先の厳しい要求で鍛えられた
:踏んだり蹴ったりの歴史が高収益体質をつくる
市場が成熟して頭打ちになった環境下では、従来のビジネスモデルや戦略に固執していると時代に取り残される恐れがある。ただ、とにかく変化すればいいと安直に考えてはいけない。ビジネスモデルや戦略に時代が追いついて、ようやく収穫の時期を迎えるケースもあるからだ。
営業利益が過去最高を記録した日特エンジニアリングも、最近になって時代が追いついてきた1社だ。同社の主力商品であるコイル用自動巻線機は、携帯電話などの部品として使われる小さなコイルを正確に巻くことができる。ただ、精密なコイルを必要とする商品は多くなく、手巻きで低コストの中国製品に押されていた。
ラジオNIKKEI記者の和島英樹氏は、「スマホやタブレットPCが登場したことにより風向きが変わった」という。
「スマホには高性能化された超小型コイルが必要ですが、手巻きでは高性能コイルには対応できない。そこで、それまでオーバースペックだと思われていた日特エンジニアリングの自動巻線機に注文が殺到するように。フューチャーホンがガラパゴス携帯と呼ばれて馬鹿にされていた時期に地道にノウハウを蓄積してきた成果がようやくあらわれたのです」(和島氏)
日特エンジニアリングの12年3月期経常利益は前期比40.1%増で、2期連続の増収増益だ。ちなみに同社は円建て決済を原則としている。海外メーカーからのドル建て注文は拒否するため、円高になっても影響を受けない。ドル建てを希望するメーカーから見ると割高になるが、それでも注文が殺到するのだから、同社の自動巻線機が高い評価を受けていることがよくわかる。
春を迎えたという点では、自動車部品メーカーにも注目したい。和島氏は、自動車部品メーカーの苦難の歴史をこう振り返る。
「自動車部品メーカーがおいしい思いをしたのは、日本でモータリゼーションが進んだ1960年代まで。日本車の輸出が増えて日米貿易摩擦が起きると、メーカーは現地生産に切り替えて部品も現地調達に。それに耐えたと思ったらプラザ合意で超円高になり、メーカーからの厳しい値引き要求にさらされました。そこを耐え抜いた部品メーカーも、カルロス・ゴーンの系列解体で淘汰されてしまった。まさに踏んだり蹴ったりの歴史です」