しかし、苦難に耐えた甲斐はあった。いま生き残っている部品メーカーは、幾多の苦難を乗り越えた過程で高い技術力と強固な収益体質を手に入れた。現在、中国で自動車の需要が急速に伸びているが、日本の部品の品質が高く評価され、中国車メーカーから注文が殺到しているのだ。

「たとえばゴム部品がそうです。ゴムはローテクなので、最初は中国車メーカーも自前でやろうと考えたようです。しかし中国製は雨漏りしたり、エンジン音が車内に響いて使い物にならなかった。そこで日本の部品メーカーに声がかかるようになりました。なかでも注目は鬼怒川ゴム工業です。現メーカーとの直接取引に成功して、いまや引く手あまた。15年度には中国での売上高を現在の3倍強にする計画を立てています」(和島氏)

同社は純利益で2期連続最高益更新中。日特エンジニアリングと同様、取引先の厳しい要求で鍛えられたおかげでいまの高収益がある会社といえるだろう。

文句を言わないロボット:モノ言う労働者が増えた中国

【ファナック】ロボットやコンピュータを駆使して自動化を実現したファナックの無人工場(2000年・山梨県)。(PANA=写真)

成長を続ける中国経済の恩恵に、これからもありつけそうなのがファナックだ。

同社の主力商品は、工作機械用NC(数値制御)や産業用ロボット。BtoB企業なので一般の知名度は高くないが株式時価総額は国内で13番目(12年8月6日現在)という日本を代表する企業だ。12年3月期は、2期連続の増収増益だった。

それにしても、なぜいまからなのか。カブ知恵代表取締役の藤井英敏氏は次のように解説する。

「世界の工場と呼ばれた中国は、曲がり角を迎えています。これまで中国に生産拠点を置く企業が多かったのは、人件費が安かったから。しかし中国でもモノを言う労働者が増え、賃上げ圧力が高まってきた。高い賃金を払うなら、文句を言わないロボットを使って国内生産をするほうが経営側は安心できる。それを受けてFA(ファクトリー・オートメーション)化が進み、ファナックなど産業ロボット企業が注目を集めています」