ベンチャー振興への最大の障害物とは

日本企業の製品は品質が高いといわれる。それは、消極的不良をなくす現場での品質管理の成果であるが、見方を変えれば、新しい技術の導入に保守的であるために積極的不良が起きないことの結果でもある。これは、日本の生産財ベンチャー企業における悩みの共通の源泉でもある。日本のベンチャー企業の新製品を最初に採用してくれたのはアメリカの企業だったという例が少なくない。アメリカでベンチャーが活発なのは、ベンチャーキャピタルがしっかりしているせいだけではない。新しいものを積極的に受け入れてくれるユーザーが身近にいるからである。残念ながら、日本のユーザーは他社への納入実績がないと使ってくれないことが多いという。この保守性こそ、日本のベンチャー振興における最大の障害物ではないかと私は考えている。安定した高品質を求めることの意図せざる副作用である。

日本の企業がベンチャー企業からの調達に関して保守的になるもう1つの理由は、協力してくれたサプライヤーへの報い方にある。高い値段を支払うということではなく、長く買うということで協力に報いようとすることが多い。そのため、新しいサプライヤーに切り替えるのが難しいのである。

喜ばしいことに、最近は、日本でも新しい技術を積極的に取り入れようとする企業が増えている。既存の技術を用いたイノベーションが収穫逓減を起こし始めたからであろう。しかし、新しい技術への挑戦に伴って厄介な積極的不良の問題が起こっている。しばらく前にアメリカで問題になったトヨタ自動車の不良品問題がその例ではないかと私は思っている。トヨタは自動車の電子制御化の先端を走っていた。それが積極的不良をもたらしたのだろう。今回の787の不良問題も、同じように蓄電システムの電子制御化がもたらした積極的不良である。