東大生の「官僚離れ」が進んでいる。いったいなぜか。学歴研究家じゅそうけんさんの著書『受験天才列伝』(星海社新書)より、元官僚の宇佐美典也さんと東大生作家の西岡壱誠さんの鼎談の一部を紹介する――。(第2回)
財務省庁舎
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霞が関で行われている「学歴マウント」の実態

宇佐美典也 制度アナリスト
1981年生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済産業省に入省。2012年に退職し現職。

西岡壱誠 東大生作家
1996年生まれ。東大合格のノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、株式会社カルペ・ディエムを設立し、代表に就任。

【じゅそうけん】宇佐美さんにぜひお伺いしたかったのは官僚の世界における「受験天才」のリアルについてです。大蔵省(現・財務省)出身の片山さつきさんが、鳩山邦夫さんに対して「私は全国模試1位でした」とマウントを取ったという学歴厨エピソードは有名ですよね。ほかにも、僕たちのまだ知らない「受験天才エピソード」や「学歴厨エピソード」が、霞が関に眠っているのではないでしょうか。

【宇佐美】まさに「模試の成績」は語り継がれますね。「模試1位同士でナンバーワン・ツー争いをずっとやってる」みたいなこともありました。自分は予備校に行っていなかったからその手の情報に疎くて、大学入学時にも入省時にも事情に詳しくなかったのですが、「予備校勢」みたいな連中が「あれが模試上位の○○か」みたいなことを言い合っているのを目にしてきました。

【じゅそうけん】「模試の成績」は、学歴好きが最もテンションが上がる話題の一つです。昭和の頃からずっと変わらない組織文化といわれます。

予備校模試の成績優秀者はずっと語り継がれる

【宇佐美】ヤンキーみたいなんですよ。「あれが関西の雄!」みたいに一目置き合っている。もちろん模試の成績だけじゃなく「学歴」が話題になることもありますよ。

【じゅそうけん】国家公務員採用総合職試験(旧I種)の試験の順位よりも「模試」の点数のほうが幅を利かせるんでしょうか。

【宇佐美】はい、総合職試験よりも、明らかに「予備校模試の1番・2番」のほうが格式が高いんです。もちろんI種の試験で1番とか2番みたいな飛び抜けた成績の人は目立つし、財務省は採用試験の点数にもある程度こだわるかもしれませんが、それ以外の省庁はそこまでこだわらない。

人事担当者にとっても、採用試験での点数は「横並びになったときにどちらを優先するか」くらいの限定された意味しか持たないですから、多くの人は「受かっているわけだから、とりあえずいいよね」くらいの感覚だと思います。それに比べれば、予備校模試の成績優秀者はずっと語り継がれるし、格式が高い。

【じゅそうけん】そこまで格式が高いとは、驚きです。模試の順位表は、上位者だけの名前が開示されるから、特異な文化を生み出しやすい仕組みでしたよね。