最初に質問し、相手の求める情報を探り出す
これについては、逆の立場になれば、いろいろと見えてくるかと思います。
たとえば、初めて訪れたレストランでメニューを開いたら、なじみのない料理が並んでいたとします。「どれがどんな料理か」もわからないので、店員に聞いてみたところ、こんな説明をされたらどう思いますか?
×「このコック・オ・ヴァンはフランス・ブルゴーニュ地方の伝統料理で、鴨肉を赤ワインで煮込んだ料理です。この料理を食べるときにはこの料理の煮込みで使ったワインと同じワインを飲むというルールがあります。カスレは……。フリカッセは……。スープドポワソンは……」
「一つひとつを細かく教えてもらっても、覚えきれないよ……」と多くの人は困るはずです。途中で「よくわからないから、もう何でもいいや」と聞くのをあきらめたくなるのではないでしょうか?
一度に覚えられる情報の量には限りがあります。説明する側の人も逆の立場になれば、必要以上の情報を前にして「やっぱりわからない」となりうるのです。
では、この場合、説明が上手な人はどんな説明をするのでしょうか。
おそらく、説明する前にこんな質問をするでしょう。
お客さんの返答によって、オススメする料理を絞り、一つひとつを簡潔に説明して、お客さんに料理を自分で選んでもらうという方法をとります。このようなやりとりをすることで、お客さんが食べたい料理を選ぶことができるのです。
相手はすべての情報を知りたいわけではありません。
説明上手な人は、とにかく相手が求めている情報は何かを探っていきます。
「丁寧に説明をする」ほど聞き手は疲れやすい
できない人は丁寧に説明したい。
新しく社員が入ってきてあなたの後輩になったとき、職場の大事なルールをどのように伝えますか?
新入社員に早く職場に慣れてもらいたく思い、このように丁寧に説明しなければならないという一種の使命感を持っている人もいます。その気持ちもわかりますが、本当に相手が理解し、記憶できる情報なのでしょうか。
おそらく顔には出さずに聞いてくれるでしょうが、「知りたいのはそこではない」と思っているかもしれません。
説明が下手な人は、情報を一つひとつ丁寧に網羅的に説明しようとします。結果的に情報量が多くなり、聞き手を疲れさせ、聞く気を失わせてしまいます。
実は、「丁寧に説明をする」ことが必ずしも正解ではないのです。
説明が上手な人は、丁寧に説明をしようということにこだわりません。
丁寧に一つひとつ説明するのではなく、相手が知るべきことや知りたいことを厳選して説明しようと考えます。