12月2日からマイナンバーカードと健康保険証が一体化され、「マイナ保険証」を基本とする仕組みに移行する。『裏金国家 日本を覆う「2015年体制」の呪縛』(朝日新書)を上梓した経済学者の金子勝さんは「政府は、技術的にとんでもなく遅れた4桁の暗証番号で顔認証も不安定なプラスチックカードを全国民に強制しようとしている。通常の健康保険証廃止を止め、一からやり直すべきだ」という――。
「保険証廃止」と書かれたニュースの見出し
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政府のDXは決定的に間違っている

「裏金国家」に支配された政府の産業政策が日本の産業衰退をもたらしている。

政府の産業政策の看板とされているのはGX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)であるが、政府のGXとDXはともに決定的に間違っている。

本書でこれまで述べた政府のGXが、大手電力会社の地域独占を維持し、安全性もコスト面も著しく劣る原発推進を続けるかぎり、日本のエネルギー転換はどんどん遅れていくだろう。

本当の問題は、原発の安全性と雇用を確保しつつ、いかに高コストの原発をソフトランディングさせるかにある。ところが、大手電力会社の地域独占と天下りが結びついた日本型オリガルヒ経済に猛進して、時代遅れで危険で高コストのガラパゴス・エネルギー体制を維持しようとする完全に間違った産業政策を実行している。経済産業省を早急に解体しないかぎり、日本経済の衰退は止まらないだろう。

マイナ関連事業3000億円を大企業8社が独占契約

実はマイナンバーカード、とくにマイナ保険証を強制する政府のDXもまったく同じ構造に陥っている。このままでは、日本のITを救いきれないほど衰退させていくだろう。

この分野での裏金の実態は不明だが、政治献金と技術的に遅れた日本の情報産業のための救済事業との結びつきは非常に強い。

ほぼ10年間でマイナンバー関連事業を少なくとも3000億円近く発注していると見られるが、大企業8社が共同受注などで独占的に契約している。

自民党の政権復帰以降の9年分の政治資金収支報告書によると、8社のうち自民党の政治資金団体「国民政治協会」に献金していたのは、NTTデータ、凸版印刷(現TOPPANホールディングス)、日本電気、日立製作所、富士通の5社で計7億円に達するという報道も出ている。

その中心となるJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)には総務省官僚が天下っている。