※本稿は、林芙美(監修)『間違いだらけの「野菜」の食べ方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
野菜は砕くと栄養素を吸収しやすくなる
野菜の栄養素は細胞壁に守られているのですが、細胞壁を壊すとどれだけ吸収率が高まるのでしょうか。リコピンとβ-カロテンについて調べた海外の研究があります。
リコピンは、トマトに多く含まれる赤・オレンジ色の色素成分です。活性酸素を消去する作用があり、血中のLDL(悪玉)コレステロールを低下させる機能が報告されています。
ドイツのハインリッヒ・ハイネ大学の研究(*1)によると、新鮮な生のトマトとトマトペーストを15gのコーン油と一緒に摂取した場合、トマトペーストのほうがリコピンの吸収率が3.8倍も高いことがわかりました。
また、β-カロテンは植物がもっているオレンジ色の色素成分です。抗酸化作用があり、体内ではビタミンAに変換されて目や皮膚、粘膜の健康に役立ちます。
にんじんにはこのβ-カロテンが多く含まれます。こちらも別の海外の研究(*2)から、ピューレにしたにんじんは、生のにんじんよりβ-カロテンの吸収率が1.5倍高いことが判明しています。トマトやにんじんを食べる際は、油と一緒に摂取したりミキサーなどで粉砕して細胞壁をあらかじめ壊しておいたりすれば、リコピンやβ-カロテンを効率よく摂取できます。
そうはいっても、トマトやにんじんを食べるたびにジュースやソースにするのはちょっと面倒かもしれません。そのような方は、トマトジュースやトマトの水煮缶など、市販の野菜加工品を活用するのも一案です。
ただし、市販の野菜ジュースは製造の過程で一部の栄養素が失われている可能性があります。また、トマトケチャップなどの調味料は食塩や砂糖などが添加されているものも多く、食塩や糖のとりすぎにつながるおそれもあります。
市販の野菜加工品は調理のひと手間が省けるというメリットがありますが、頼りすぎず、バランスよく使うようにしましょう。トマトなどは一度冷凍してから自然解凍して調理に使うと細胞壁が壊れてうま味も出やすくなり、調理の手間も省けます。
(注)
(*1)Gärtner C, Stahl W, Sies H. (1997) Lycopene is more bioavailable from tomato paste than from fresh tomatoes. Am J Clin Nutr, 166(1), 116-22.
(*2)Livny O, Reifen R, Levy I, Madar Z, Faulks R, Southon S, Schwartz B. (2003) Beta-carotene bioavailability from differently processed carrot meals in human ileostomy volunteers. Eur J Nutr, 42(6), 338-345