世界各国で中国スパイによる事件が多発している。国際ジャーナリストの矢部武さんは「中国は20年前からスパイ活動を展開していたが、西洋諸国は中国市場での立場を悪化させないために対応が遅れていた。この数年でスパイの脅威を認識し対応を強化したため、情報管理が手薄な日本が狙われやすくなっている」という――。
ジェフリー・A・ローゼン司法副長官は2020年9月16日、ワシントンD.C.の司法省で、「APT 41」と呼ばれる中国政府や人民解放軍の支援を受けたサイバー攻撃に関連する告発と逮捕について、FBIのデビッド・ボウディッチ副長官の話を聞いた。
写真=AFP/時事通信フォト
ジェフリー・A・ローゼン司法副長官は2020年9月16日、ワシントンD.C.の司法省で、「APT 41」と呼ばれる中国政府や人民解放軍の支援を受けたサイバー攻撃に関連する告発と逮捕について、FBIのデビッド・ボウディッチ副長官の話を聞いた。

スパイ行為の見返りとして約4億円を受け取る

2024年9月3日、米国3大ネットワークの1つABCはニューヨーク州知事の元側近が逮捕されたニュースを報じた。同州のクオモ前知事と現職のホークル知事の側近だった中国系女性、リンダ・サン被告(41)が中国政府の「代理人」として活動していたスパイ容疑で逮捕されたというのだ。

ホークル知事の副主席補佐官を務めていたサン被告は中国政府関係者を積極的に州当局者に会わせたりする一方で、台湾の要人が州知事に接触するのを阻止したり、中国政府にとって重要な案件については州知事のメッセージを書き換えたりしていたとされている。

これらの行為は中国の諜報活動の一部であり、中国が領有権を主張する台湾の地位や少数民族ウイグル族の弾圧など論争の多い問題で中国の立場に有利になるように政治的言説に影響を与えることに重点を置いている。

サン被告は中国共産党の関係者と接触し、スパイ行為の見返りとして数百万ドル(約3億円から4億円)相当の利益を得て、他にもコンサートやショーのチケット、中国政府高官のシェフが調理したアヒル料理を受け取っていたという。

ホークル知事は会見で、「激しい怒りを感じ、衝撃を受けています。本当に厚かましい行為で、州民の信頼を裏切りました。不正が発覚した後、すぐに解雇しました」と語った。