アメリカでは“悪質スパイ企業”に制裁を発動

さらに中国の諜報機関はサイバースパイ活動も積極的に展開している。

米国司法省は2024年3月25日、中国国籍の7名を外国での諜報活動と経済スパイ活動を推進するために約14年間にわたり、企業や批評家、政治家などを標的にハッキングしたとして、コンピューター不正侵入と通信詐欺の共謀罪の違反容疑で起訴したと発表した(司法省のホームページより)。

これに伴い、リサ・モナコ司法副長官は「1万件以上の悪意あるメールが複数の大陸で数千人の被害者に影響を与えました。本日の起訴状で申し立てられているように中国政府が支援する大規模な世界的ハッキング作戦は、ジャーナリスト、政治家、企業を標的とし、中国政府の批判者を抑圧し、政府機関を危険にさらし、企業秘密を盗みました」と述べた。

標的となった米国政府関係者にはホワイトハウス、司法省、商務省、財務省、国務省の職員、民主・共和両党の上院および下院議員が含まれていたという。

五星紅旗を背負ってハッキングする人
写真=iStock.com/Leestat
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この中国政府系ハッカー集団は「APT31〔=Advanced Persistent Threat(高度で継続的な脅威)〕」と呼ばれ、諜報機関MSSの一部門とされている。司法省は7人の起訴に加え、MSSのフロント企業と目されている湖北省武漢市にある「武漢小瑞科技有限公司」に制裁を発動したことも発表した。

メリック・ガーランド司法長官は、「私たちは、国民に奉仕する米国人を脅迫し、米国の法律で保護されている反体制派を黙らせ、米国企業から盗みを働こうとする中国政府の取り組みを容認しません」と警告した。

元中国スパイが活動内容を暴露

中国は政治的工作から経済スパイまで様々な諜報活動を展開しているが、その中でも特に闇の部分として恐れられているのは、海外で中国政府を批判している人たちを拉致し、本国に送還する任務を負っているスパイである。

彼らは中国の連邦警察および治安機関である公安省(MPS=Ministry of Public Safety)の部隊に属し、その実態はよく知られていないが、それがついに明らかにされた。

MPSで2009年から2023年まで潜入捜査官として働いたという元スパイ(39歳の男性)が2024年5月13日、オーストラリアの公共放送ABCの調査報道番組「フォー・コーナーズ」に出演し、活動の実態について語ったのである。

番組ではエリックという仮名を使い、安全のためにフルネームやMPSの担当者の身元などは公表しなかった。

MPSの部隊は中国共産党(CCP)の主要な弾圧手段の1つとされ、CCPと習近平主席の批判者を監視し、拉致し、沈黙させるために世界中で活動しているが、彼も15年間、中国、インド、タイ、カンボジア、カナダ、オーストラリアで活動したという。