企業の「失速」はあっという間
問題は、こうした企業がいつまで革新を続け、競合に負けずにいられるかということだ。
ほとんどの人が思うよりも急速に失速する可能性はあると思う。理由は簡単で、AOL、DEC、アルタビスタ、パーム、ブラックベリー、ノキア、ネットスケープ、ヤフー、マイスペース、コンパック、コダックが、どれもしばらくは最先端の地位を維持しつつ、技術パラダイムの次の変化に生き残れなかったのを見てきたからだ。ハッと気がつくと、他のでかい立派な企業がこの一覧に名を連ねることになるだろう。
残念ながら、そうした巨人たちの時代が終わってもその地位を安泰にしておく方法はある。パラドックスめいているが、その企業を抑える手法だとみんなが思っている「規制」である。
複雑な規制は、確立した企業ならば専門家の部門により対処できる固定費をつくり出す。だが従業員が少なくて資本も少ないスタートアップにとって、そうした規制は直接的な参入障壁となる。アメリカ経済についての研究では、市場集中が進むのは、規制が最も急増する産業部門だとされる。
フェイスブックが競合他社を排除する「古臭い手口」
フェイスブックが、連邦通信品位法の第230条を廃止するのに再び関心を持つようになっているのは、この文脈で理解すべきだ。この条項のおかげで、アメリカのプラットフォームはコンテンツのモデレーションを行っても、他人が自分たちのサイトで公開するものについて、訴訟の心配をせずにすむのだ。
これがないと、プラットフォームはきわめて厳しいモデレーションを行うリソースを用意して、何ひとつうっかり表に出たりしないようにできない限り、ヘイトスピーチやハラスメントに対してすら対処できなくなる。
マーク・ザッカーバーグがこの条項廃止に前向きなのを見て、一部の人は彼が、フェイスブックはもっとしっかり監視されるべきだとようやく学んだのだと思った。実は、これは競合他社にとっての費用を上げるという古くさい手口の最新版というだけの話だ。
人々が投稿するすべてをほぼリアルタイムで読み、検討し、モデレーションするのは、巨大なインフラすべてと従業員6万人を擁するフェイスブックにとってすらきわめて高くつく。だがザッカーバーグにとってそれ以上に重要なのは、小規模のライバルたちにはまったく対応不能になるということなのだ。
マイスペースがこんな規制を導入するのに成功していたら、いまも君臨し続けており、ボノやトニー・ブレアはいまも同社のビーチパーティーに参加し続けていたかもしれない。
1つ私が恐れているのは、政府と大企業があまりに密着しすぎて、政府は企業にますます保護を与え、かわりに企業はそのときの与党政治家たちが好むように運営や行動を適応させるようになることだ。
社会のちがう領域の間には、ある程度の健全な敵対関係があるべきで、それぞれがオープンで分散化されたシステムの中で釣り合いを取るようにしなくてはならない。大きな政府と大企業が手を組んだら、小規模プレーヤーたちはひとたまりもない。