生産調整をやめれば米はすぐに戻ってくるが…

減反政策は2018年に廃止され、現在は主食米以外を作付けすると補助金がでる政策に切り替わっている。笠原さんには「政策はこのまま続くのか、生産農家にとってはいいことなのか」を聞いた。

彼はよどみなく答えた。

「今後、どうなるのかそれはわかりません。でも、生産調整は続くんじゃないですか。

僕は18年に減反政策が終わってから今までフルに作付けしてます。田んぼも増やしています。減反しようとは思いません。おいしい米を作っていれば必ず売れます。生産調整しようとは思ったことないです。

生産調整は、政府から『米を作るな』と言われるわけじゃないんですよ。農家自らが選択できます。持っている田んぼのすべての面積を作付けしてもいいし、半分くらいの作付けをやめてもいい。また、面積を減らさずに飼料米や酒米、雑用米を作ってもいいんです。それでも補助金がもらえる。要するに、みんなが主食用米を作らないように誘導するのが生産調整です。

耕作放棄して補助金をもらう農家よりも、飼料米や酒米を作りながら補助金をもらっているところのほうが多いんじゃないですか。そういうところは田んぼを保持しているから、いつでも主食米を作ることに戻れる。そうすれば生産量はすぐに回復できますよ。今はみんなが主食米を作ると米余りになるから生産調整してるんです。ただ、今年それが思った通りにいかなかったんでしょう」

笠原農園
筆者撮影

農協に出荷するのをやめた理由

「飼料米っていっても、べつにまずい米じゃないんです。飼料米とは多収量米のことで、肥料を抑えて収穫を少なくすれば食べてもおいしい米ができる。山形のつや姫って、元々は多収量米ですから」

笠原農園の米は農協に出荷していない。10年前からやめている。それは農協の買い上げ価格が安いからだ。

「今年で言えば、農協が買う価格はコシヒカリ60キロ(1俵)で2万円。うちが直接販売すると3万8000円。ただし、うちが出す価格には人件費、包装、配送料がかかります。10年前からもう農協へ出すのはやめました。

うちだけでなく、ふるさと納税やネットで米を売る自信がある農家は農協には出さないじゃないかな。魚沼に限ると、どうでしょう、2割くらいは自分で売っていると思います。日本全体だと、まだ6、7割の農家さんは農協じゃないかな。それは兼業農家が多いから。兼業農家は仕事をしながら米作りをしているから、ホームページで販売したり、発送したりする手間と時間がない。だから、まだ全体の半数以上は農協に出していると思います」

「笠原農園」の笠原勝彦さん
筆者撮影