過去に実践してきた「他ではありえない企画」
また、最近ではタイパを重視する消費者が増えました。安い店を探して買い回りをすることなく、1カ所で満足のいく買い物をしたいニーズが高まっています。つまり、これからのスーパーマーケットは、「来店顧客層を広げていかなければならない」と原島社長は感じていたのです。
そこでベルクでは、新しく開拓する客層として「Z世代(1990年代半ばから2010年代に生まれた世代10代~20代後半までの年齢層)」に焦点を当てて、Z世代の客層を取り込むことを決めました。
2020年以降はZ世代に向けた新しいアプローチを次々と開始。これによってSNSで情報が拡散されることもぐっと増えて、ベルクの知名度が一気に広がっていきました。
図表2をみると、飛び道具的な、ちょっと遊び過ぎている企画もあります。しかし、私はこれこそ、ベルクの成長を支えている一番のポイントだと考えています。
それは小売業の基本戦略、「小は大と違うことをやる」という原則です。これを忠実に守っていることが大きいのではないでしょうか。
なぜこの戦略に至ったのか、そして企画以外にはどんな取り組みを行っているのか紹介していきます。
最大のライバル「ヤオコー」とは違うことをやる
ヤオコーは1890年に埼玉県比企郡小川町に「八百幸商店」として創業しました。創業130年を超える食品スーパーの老舗です。
ベルクは1959年に埼玉県秩父市に「主婦の店秩父店」としてスタートしました。創業65年の企業です。ヤオコーに比べたら歴史の浅い会社です。
結果的に売り上げもヤオコーにはまだ及びません。売り上げで1.7倍、利益で1.8倍の差があります。両社とも伸びていますから、なかなか差が縮まってはいきません。
だからこそ、ベルクとしては同じ埼玉県内を中心に店舗展開する先輩企業とは「違った戦略」をとらなければ、どうしても陰に隠れてしまうのです。その意味でもターゲットを変えて、おもしろいと言ってもらえる企画を次々と打ち出し、客層を変えようとしています。
結果的にこれは、両店の強い客層が異なることとなり、お互いに生存できる「共生」へとつながるのだと筆者は考えます。