山梨県を中心に15店舗を展開する「いちやまマート」は、健康志向の食品を数多く集めたスーパーだ。健康に配慮したPBの種類は500を超え、全国のスーパー60社で取り扱っている。なぜ健康に重きを置くのか。そのきっかけはなんだったのか。経営コンサルタントの岩崎剛幸さんがリポートする――。

価格ではなく、健康で勝負するローカルスーパー

昨年末、SNSであるローカルスーパーが話題になりました。

無添加、オーガニック野菜、グルテンフリーなど健康志向の食品を数多く集め、価格戦略ではなく「健康的な食生活を提案」という独自の戦略で顧客の支持を集めているというのです。

これが都内の世田谷などにあるスーパーならわかるのですが、このローカルスーパー「いちやまマート」の本社は山梨県甲府市にあるのです。

今回は、いちやまマートに伺い、そのスゴさを調査するとともに、三科雅嗣みしな・まさし社長に特異的な戦略をとった経緯を伺いました。

私が以前聞いたいちやまマートの評判は、とにかく繁盛しているスーパーで、いつもお客さんが絶えない店というものでした。しかし当時はそこまで健康にこだわっているイメージはなく、どちらかと言うと売り方が斬新でおもしろく、集客力のあるドミナント型スーパーというイメージでした。

ところが現場で見た今のいちやまマートは違いました。大手メーカーのNB商品や低価格品、割引商品なども売り場には陳列されていますが、売り場のあちらこちらに「美味安心」マークのついた商品が多数陳列されています。

中には完全に売り切れている商品もありました。美味安心シリーズの中でも三科社長推しアイテムの一つ、「焙煎したてのうまいコーヒー」(税抜き699円)は完売していました。

取材当日は完売していた「焙煎したてのうまいコーヒー」
筆者撮影
取材当日は完売していた「焙煎したてのうまいコーヒー」

この珈琲豆は焙煎したての豆をパックし、翌日にいちやまマートの店頭で販売するという代物。パッケージには焙煎日が書かれていて鮮度を売りにする珈琲豆です。珈琲専門店のようなこだわりの逸品が隔週で届くというスーパーの常識を打破するアイテムのため、入荷するとすぐに売り切れてしまうということでした。