関東や信越地区を中心に22店舗を展開する鮮魚小売りチェーン「角上魚類」が好調だ。直近の売上高は400億円と過去最高を記録しているが、その理由は店舗数を増やしたからではない。既存店舗の集客がどんどん増えているのだ。いったいどんな店づくりをしているのか。経営コンサルタントの岩崎剛幸さんがリポートする――。

業界大手を圧倒する利益率

毎週末、店の前で大渋滞が起きる。そんな鮮魚専門店があります。新潟県長岡市寺泊発の鮮魚専門小売店「角上魚類」(以下、角上)です。

江戸時代から続く網本兼卸問屋で、1970年代に小売業に進出。1984年に県外(群馬県高崎市)に出店したのを皮切りに、現在は首都圏郊外と新潟など全22店舗を展開しています。

なぜ人気なのか。まずは角上魚類の業績推移を見てください。

【図表】角上魚類HD損益実績比較表

22年3月期の角上の売上高は400億円。コロナ前の18年同期比で120.5%です。さらに驚くのは営業利益、経常利益が18年同期比で1.7倍。経常利益率、営業利益率共に7%を超える高い利益率です。23年3月期も過去最高売り上げとなり、勢いは続いています。

一般的に生鮮食品分野は粗利率が低いカテゴリーです。粗利が低いため営業利益も低くなるものですが角上は非常に高い利益をたたき出しています。

角上のすごさは同業他社と比較するとさらによく分かります。

【図表】鮮魚小売り大手3社の損益比較表

鮮魚小売り大手の中島水産(64店舗)と魚力(うおりき、96店舗)は百貨店や商業施設で引っ張りだこの鮮魚小売り事業者です。両社ともに売り上げは200億円を超え、全国展開している有名企業です。角上は営業利益率、経常利益率、当期利益率でこれらの業界大手を圧倒しています。

営業利益率が7%を超え、東証プライム上場企業である魚力の2倍以上の利益を出し、1店舗当り売上高5倍強の実績というのは驚きです。なぜここまで儲けられるのでしょうか。