コロナ禍で露呈した日本のIT音痴
筆者の実体験を一つ紹介しよう。筆者は2022年頃、微熱を感じて簡易検査キットを試したところ陽性と出た。同年にはコロナも収束し始め、取材はオンラインではなくリアルでの面会が増え始めていて、メディアブリーフィングや記者会見などへの参加で感染したのかもしれない。
簡易検査キットで陽性と出たので保健所に電話で連絡して届け出をしたが、病院を紹介してくれないため、病院は自力で探すことになった。保健所に名前を登録した後、病院に出向きPCR検査を行なって陽性を確認した。
ところが、病院で保健所から送られてきた連絡を見たら筆者の名前が間違って伝わっていたのだ。筆者が入力したデータをそのまま保健所のデータとして使えば問題ないのに、わざわざ入力をし直し、しかもミスをしていたということだ。
このようなことはどうやら日常茶飯事で起きているようだった。この頃、保健所がひっ迫して悲鳴を上げている報道を見かけたが、そのうちのいくらかはこうしたアナログな作業によるものが影響していたのかもしれない。
「DX」の意味を知らない人が多すぎる
こうした業務は、例えばRPA(Robotic Process Automation)技術を使えば、データ転記を自動変換できるうえ、ミスは消え労働時間も短縮できる。
ソフトバンクは、RPAを使って年間の登録打ち込み時間をゼロに減らし、年間残業時間を1万5000時間削減したという例を発表している。
ITを利用するということは、パソコンやスマホを使いこなすことではない。ITは、業務をできる限り自動化して無駄な作業を減らすために使うものなのだ。
前項のような話は保健所に限ったことではない。他の行政機関でもアナログ的な慣習は多く、日本のITの遅れはまだまだ続きそうだ。
デジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「パソコンを揃えること」といった間違った認識を持つ人たちもいまだに多い。
AIやIoT(Internet of Things)を利用することによって、これまで気がつかなかった改善点が見つかるなど、とても有益なツールなのだが、そのことがほとんど認識されていないようだ。
また、SNSを利用した犯罪も増えてきたため、「インターネットやITは怖い」と言って、スマホやパソコンを持たない人たちも、年代や地域によっては一定数いるようだ。
これはAIについても同様で、「AIは危険」といった一面的な捉え方をしている人もいる。もちろん、AIにはそういったリスクの側面はあるが、同時にそれに対処する技術も生まれていることは周知されていない。