日本全体で賃上げの動きが活発化している。連合の公表によると、今年の春闘の平均賃上げ率は5.1%だった。だが、その恩恵を受けられていない世代が存在する。エコノミストのエミン・ユルマズさんとの共著『「エブリシング・バブル」リスクの深層 日本経済復活のシナリオ』(講談社+α新書)を刊行した第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣さんが解説する――。

日本全体が賃上げに動きはじめている

連合が公表した今年の春闘の最終結果によれば、平均賃上げ率は5.1%と、33年ぶりの大幅な賃上げが実現した。

中小企業の賃上げ率も4.45%と、大企業だけでなく中小企業にも賃上げの流れが波及し、日本全体が賃上げの方向に動きはじめている。

2023年の一般労働者の所定内給与は前年比+2.1%となり、既に公表されていた毎月勤労統計ベースの同+1.6%を上回った。

(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」による。なお、賃金構造基本統計調査は約5万事業所を対象に労働者個人のレベルで賃金を調査するのに対し、毎月勤労統計の対象は約3.3万で事業所全体の人件費を従業員数で除して賃金を求める。このため、賃金構造基本統計調査の方が正確性は高いと考えられる)
【図表】所定内給与(一般労働者)の比較
出所=厚労省 筆者作成

賃金上昇を牽引しているのは「20代と60代」

年齢階級・企業規模別にみると、賃金上昇の牽引役となっているのは「20代」と「60代以降」である。

20代については少子化の影響で人口が少ないことに加え、労働市場の流動性が高く、賃金が上がりやすくなっていると推察される。

また60代以降については、定年延長等による平均賃金上昇が影響していると考えられる。

【図表】23年の企業規模別世代別一般労働者賃金
出所=厚労省 筆者作成