『進撃の巨人』と北欧神話の共通点
北欧神話で終始見られるのが、「神々vs.巨人」の構図です。この対立構造を軸にして北欧神話は始まり、そして終わりを迎えるんです。その始まりはこんなお話。
原初の世界には巨大な深淵ギンヌンガガプだけがありました。やがて、深淵の南側に灼熱の国ムスペルヘイムが、北側に極寒の国ニヴルヘイムが誕生します。するとあるとき、ニヴルヘイムから来た氷が深淵に転がり落ち、そこにムスペルヘイムから火花が飛んできます。氷と火が衝突して雫が滴ると、なんと原初の巨人「ユミル」が生まれました。不思議すぎる!
また、別の雫から牝牛アウズフムラが生まれ、巨人ユミルはこの牝牛の乳を飲んですくすくと育ちます。そんなあるとき、ユミルの脇汗から男女の巨人が生まれ、ユミルの両足から6つの頭を持つ怪物が生まれます。どういう生まれ方⁉ そして彼らは巨人族の祖となります。
一方、牝牛アウズフムラが塩の氷を舐めていると、その氷から原初の神「ブリ」が現れます。ブリの息子がとある女巨人と結婚し、「オーディン」「ヴィリ」「ヴェー」という3柱の神が誕生しました。そしてオーディンの子孫が北欧神話の主要な神々として活躍していくことになります。
原初の巨人から大地が創造される
それぞれ繁栄していく神々と巨人ですが、互いに馬が合わず、オーディンら3兄弟はある日、巨人の親玉のユミルをなんと殺してしまいます。するとユミルの身体から血が溢れて洪水となり、巨人族は1組の夫婦を除いて滅亡。このとき生き残った夫婦の子孫である「霜の巨人」たちは、後の神話で事あるごとに神々と喧嘩沙汰に。血なまぐさい始まり方のせいで、因縁が後世まで続いてしまうんです。
さて、オーディンはユミルの身体を引き裂いた部位から、天地や海、山、人間の国などを創造します。こうして北欧神話の舞台が整ったというワケ。なかなかの超展開!
【関連知識】
世界の始まりに、牝牛アウズフムラの乳を飲むユミル
氷と火の衝突によって生まれたユミルは、牝牛アウズフムラの乳を飲んで育ちます。牛が舐めている氷から出てきているのが原初の神ブリです。全ての始まりに1匹の牛がいる、という異質感が北欧神話のユニークで面白いところですね。もしかすると、生命を育むのは牛の乳であるというイメージが、古代の人々に強く根付いていたのかも?