民間企業と寺院がタイアップ…外資系金融会社も納骨堂事業に参入
自動搬送式納骨堂は、民間企業と寺院とがタイアップして運営にあたるケースが多い。近年では、外資系金融会社も納骨堂事業に参入していた。遺骨を収められるカロート数は1棟あたり、数千基から1万基以上の規模感である。1棟あたりの建設費は数十億円に上る。
しかし2010年代後半に入ると供給過多になり、需要が追いつかなくなってきている。自動搬送式納骨堂では破綻事例も出てきている。アナログのロッカー式納骨堂とは違い、自動搬送式納骨堂はコンピューター制御だ。通電が止まり、システムが動かなくなれば遺骨の取り出しは難しくなる。
現在、自動搬送式納骨堂に代わってトレンドの主流になりつつある永代供養が、樹木葬である。樹木葬は、野山での散骨のイメージを持つ人も少なくないが、自然の山中で散骨できるタイプは限られている。
多くの場合は、霊園内の樹木葬エリアに設けられた場所に納骨する。樹木葬には小さなプレートや自然石などを設置する個別型と、合祀型がある。合祀型の場合は敷地の隅に樹木を植え、大きなドラム缶のような容器に骨をどんどん入れていくスタイルが一般的だ。「自然に還る」とのイメージと大きく乖離し、失望するケースもあるので事前に確認が必要だ。また、個別型樹木葬の場合は先述のように、永代供養期限が定められていることがほとんどだ。
「墓を持ちたくない。海に撒いてほしい」という人のための海洋散骨も、一般的になりつつある。海洋散骨とは遺骨を粉骨して、海にまく葬送である。インターネットで検索すると多数の業者がさまざまなプランを出している。大手流通業イオンも人とペットの海洋散骨プランを出しており、全国各地の海で散骨できるという。
たとえば、北海道の小樽沖から日本三景の松島沖、ビル群が陸地にそそりたつ東京湾、富士山が望める駿河湾、桜島が雄大な鹿児島湾、サンゴ礁の沖縄の海など。遺族が乗船しない「代理プラン」では、価格は5万5000円(イオンの場合)となっている。
現在では火葬後の埋葬法として、1%ほどが海洋散骨を選んでいるともいわれている。将来的には海洋散骨を選択する人は2%ほどに拡大するとの見通しもある。
だが、「手をあわせる場所がなくなってしまう」として、遺族の合意が取れず、全部散骨をする割合はさほど多くはない。結局は、遺族は折衷案をとって分骨する割合が7割以上にのぼるとの報告もある。故人の遺志は大事にしたい。一方で、きちんとした墓を持ちたいと考える遺族もいる。結局は海洋散骨と分骨の両方をすることになり、二重コストになってしまう。海洋散骨も一長一短だ。