外見は瀟洒なマンションだが、中身は巨大な納骨施設。そんな棟が東京都内に30棟以上あり、都心部を中心に増えている。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「需要が高まっている永代供養納骨堂は、手ごろで比較的安価ですが、納骨期間や合祀先を調べないと結局コスト高になることもある。また、最近は散骨も人気だが、落とし穴がある」という――。

立体駐車場のような巨大“納骨タワー”の驚きの中身

前編では最近増えている「永代供養」(※)の基礎知識とメリット、デメリットを説明した。

※「永代供養」の定義は墓地管理者にもよるが、概して①宗旨不問、②檀家になる必要なし、③料金明示、④供養期間を設定(7年、13年、23年、33年など使用期限が決められ、その後は別の場所に移され合祀されることが多い)

特に永代供養納骨堂は、手ごろで比較的安価であるものの、納骨期間や合祀先を調べておかねば、結局コスト高になってしまうこともある。

後編の本稿では、最先端の巨大納骨堂から散骨・手元供養までを紹介する。巨大納骨堂や散骨にも落とし穴があるので、慎重な検討が必要だ。

ロッカー式納骨堂とは別に「自動搬送式」と呼ばれる巨大な納骨施設が、東京・大阪などの大都市圏に存在する。こちらは、6〜7階建てのビル1棟全体が納骨堂になっている。立体駐車場をイメージするとわかりやすい。1階で係員に車を預ければ、クレーンでどんどんビル上階へと収蔵されていく。出庫する際はボタン操作一つでまた、1階から出てくる。

自動搬送式納骨堂ブース
撮影=鵜飼秀徳
自動搬送式納骨堂ブース

自動搬送式納骨堂の基本構造はこれと同じ。必要な時にICカードを端末にかざして数分待つ。すると、収蔵されていた遺骨が自動的に運ばれてきて、扉が開く。参拝ブースにはモニターが付いていて、遺影や戒名などが映し出される仕組みだ。

この自動搬送式納骨堂は現在、東京都内で35棟ほどあるとみられる。一見すると瀟洒なマンションにしか見えない。自動搬送式納骨堂は、とにかく至便な立地が最大のメリットだ。「買い物や、仕事帰りに墓参り」がコンセプトである。

そのため、参拝者が用意するものは何もない。すでに花が生けられており、電熱式の火がついた焼香台が用意されている。冷暖房設備はもちろん、各階には清掃が行き届いた洗浄式トイレ、休憩用の洒落た椅子が複数置かれる。年配者に配慮したつくりだ。換気も十全で、香の匂いが服につく心配がない。従来の境内墓地の墓参りとは比べものにならない快適性を誇る。

自動搬送式納骨堂を運営するのは寺院が多いが、基本は永代供養なので檀家になる必要がない。キリスト教や新宗教まで宗教宗派を問わず受け入れる。ここでは参拝者の迷惑にならない限り、他宗の宗教家を呼んで、供養してもらうことも可能だ。

価格はロッカー式納骨堂に比べれば割高だが、都心で家墓を求めるよりは安価。例えば、新宿区や港区などで家墓の区画を買おうとすれば、1平方メートルあたり300万円ほどはするかもしれない。それに比べ、自動搬送式納骨堂ならば100万円前後の費用で利用できる。

だが、自動搬送式納骨堂にはリスクがあることも知っておかねばならない。