ハイブリッド車は51.4%も増加

こうした中、米国で販売実績を着実に伸ばしているのが、ガソリンエンジンを持つハイブリッド車である。

1月のハイブリッド車(充電は車の運転やブレーキエネルギーの回生のみ)の販売台数は9万970台と、前年同月から51.4%も増加しており、販売台数が前年割れしたEVと好対照を成している。

なお、米国において飛ぶ鳥を落とす勢いで売れているハイブリッド車の販売台数の53.6%を占めているのが、日本のトヨタ自動車である。

これに加えて、プラグインハイブリッド車(内燃機関を持ち、バッテリー充電は外部の充電器から行う)が2万5741台売れたため、合わせて11万6711台が登録されたことになる。

改造車の祭典「東京オートサロン」でスピーチするトヨタ自動車の豊田章男社長(肩書は当時。2023年1月13日)
写真=時事通信フォト
改造車の祭典「東京オートサロン」でスピーチするトヨタ自動車の豊田章男社長(肩書は当時。2023年1月13日)

EVの7万9517台に対して、ハイブリッド車はおよそ3万7000台もの差をつけている。

オンラインのクルマ購入アプリCoPilotのパット・ライアン最高経営責任者(CEO)は、「一般消費者はハイブリッドを選好しているため、販売が白熱している」と解説する。2023年通年でも、新車販売台数においてハイブリッド車がEVよりも優勢だ。

一般消費者も、意識の高いアーリーアダプターと同様にエコなクルマを求めていると思われる。だが、EVの欠点がいまだに大きすぎることから、ガソリン車の経済性と利便性とバッテリーのエコさを兼ね備えたハイブリッドタイプに流れていると見て間違いないだろう。

EVの代わりにガソリン車を購入する動きも

「EV不人気」という現実を目の当たりにして、米自動車大手ビッグスリーのゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティスなどもEV生産計画を縮小し、ハイブリッド車開発に大きく舵を切っている。

米レンタカー大手のハーツに至っては、保有するEVの3分の1に相当する2万台を売却し、代わりにガソリン車を購入するという。

米マーケティング企業のGBKコレクティブのジェレミー・コースト社長は、「一般消費者は、EVに乗るためにEVを購入するのではない。クルマは彼らの予算とライフスタイルのニーズに合致している必要がある」と指摘する。

単にEVの価格が下がり、充電ステーションが増えても、トータルなエクスペリエンスの満足度が低いままであれば、EVシフトは起こらないのだろう。

米ニュースサイトのアクシオスが12月6日付の論評で、次のようにまとめている。「自動車メーカーがピカピカの魅力的なEVを推しているのに、消費者は内燃機関車からハイブリッド車への乗り換えを選択している。EVシフトのペースを決めるのは、政治家や規制当局やメーカーではなく、当の消費者だ」。この見立ては当たっているように見える。

さらに2月28日には、米ニュースサイトのビジネスインサイダーも、「ハイブリッド車推進に関して、トヨタは常に正しかった。(米国の自動車の都の)デトロイトは、トヨタに謝罪する必要がある」と見出しを打った記事を掲載した。一部の米国人は、自分たちがトヨタを「時代の流れに逆らう反動的な会社」と批判していたことを反省し始めている。

こうして見てくると、少なくとも「この先10年間で米国ではEVシフトが完了する」とする論調は誇張が多いと思える。

1月の新車販売でEVが前年割れする一方で、ハイブリッド車が前年同月から大幅に増えている足元の傾向は、今後も続くのではないか。

トヨタ自動車の豊田章男会長の「EVの市場シェアは最大でも3割、残りはハイブリッド車など」という未来予測のほうが、より現実的であろう。

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