経営の多角化で、継承4年目に黒字化を達成
岩崎さんのアイデアはその後も止まることなく、「食べること」を軸とした事業は多岐にわたっている。ショッピング大黒を継承してから2年後の2022年3月には「もっと食を通じて人が交流する場を作りたい」と、地元の食材と自然食品を使ったレストランを開業。月に1回、子どもたちが無料で参加できる「自然派こども食堂」も開催して食育活動も行っている。
さらに地元の高校の食堂運営を任されるなど、気がつけばさまざまな相談が仕事となって舞い込んでくる。今ではスーパーと合わせた事業全体で30人以上の従業員を抱え、主婦や若者の働き口にもなっている。
事業を多角化したことで利益率の向上にも成功した。レストランや学生食堂など他の事業と連携することで会社全体の仕入れ量を増やし、単価を下げて、仕入れコストを大きく削減。経営は大きく改善した。そして事業承継して4年目となる2023年、ショッピング大黒を運営する有限会社ショッピングの決算は初めて黒字となった。
「ほんと、大変でしたけどね」と、さほど大変じゃなさそうに岩崎さんは笑う。
「無駄を省いてコストを抑えて、利益率をいかに上げるかを大切にしています。売上向上は正直あまり狙っていないんです。住民が減り続ける町で数字を追い続けるのって苦しいし、そういうのは良くないなって」
相談は「とりあえず岩崎さん」と言われるまでに
さらに食に関すること以外にも、岩崎さんのところにはさまざまな依頼が飛び込んでくる。移住や地域活性化の相談が来ることも日常茶飯事だという。
「なぜかわかんないんですけど、移住の相談が毎月、何件もあるんですよ。うち、スーパーなのに(笑)」
個人だけでなく、町や県など行政から地域事業の相談が来ることも多く、2022年には徳島県の総合計画審議会の委員にも就任した。
地域の人から役場の人まで「とりあえず岩崎さんのところへ行っておいて」と繋がりが繋がりを呼び、仕事のタネが自然と生まれるそうだ。これがローカルビジネスの良さだと岩崎さんは話す。
「田舎ってね、誰がどこで何をしてるか全部わかるくらい狭く濃密なんです。だから嘘もつけないし、隠しごともできない。それを窮屈に感じる人もいると思うけど、自分をごまかさないで商売をしていく必要があるので、すごく成長できるんです」