ビジネスを成功させるには何が重要か。起業家のポール・ホーケンさんは「ぼくの会社、スミス&ホーケンは創業当初、乏しい資金しかなかったため、カタログを社外へ下請けに出すのではなく自前で作った。そのおかげで新しいことを学ぶことができた。一方で、友人の会社はお金を潤沢に使える状況にあり、社外へ下請けに出してカタログを制作したため、自分で学んで向上する絶好のチャンスを手にしそこなった。友人の会社は現在店じまいしているが決して偶然じゃない。『お金さえあれば問題はすべて解決する』は大間違いだ」という――。

※本稿は、ポール・ホーケン『ビジネスを育てる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

敷き詰めたお札の上の金塊
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お金がありすぎることは、足りないより悪い

お金については、まずはぜひ頭に入れておいてほしいことが一つある。それは、「スモールビジネスにとって、お金がありすぎることは、足りないより悪い」という金言だ。

スモールビジネスにとって最大の問題は資金不足である、という昔からある言い伝えには賛成できない。ビジネスにとって――規模が大であれ、小であれ――最大の問題は想像力の欠如であって、資金じゃない。創業間もない企業がイージーに資金を手に入れられることは、創造性をスポイルする悪しき影響を及ぼす。

お金持ちの企業はコンサルタント、弁護士、賢い会計士、広告代理店、市場調査、などなどを簡単に雇ったり手に入れたりできる。

そういうわけにはいかないお金のない企業は夢見たり、想像したりする。そして、それが重要なのだ。ハングリー精神は物事が正しい方向へ進むように加速してくれるのである。

ベン&ジェリーはアイスクリーム・ビジネスを乏しい資金で始めた。だから市場での自社のイメージを戦略的に作り上げるという芸当はできなかった。選択肢のない中、ベン&ジェリーは等身大でいくほかなかった。

そう、ありのままの姿、すなわち「ぼくたちはアイスクリームを売っているんです」という姿を見せるしかなかった。彼らのメッセージはストレートだった。ベンの表現を借りれば「南部気質丸出し」。

いまになって振り返ってみると、誰か外部の力を借りてイメージを作ることができなかったのは、逆にベン&ジェリーの大きな財産になっている。武骨さが、品質と信頼を連想させるから。

ぼくの会社、スミス&ホーケンを見てみよう。ぼくたちはベン&ジェリーよりはいくらか多く資金を使えたが、しかし、カタログを制作するのにデザイナー、写真家、コピーライター、コンサルタントなどを雇う余裕はなかった。

自分たちでやるか、あるいはカタログなしで済ませるか、二択だった。出発がこんなだったので、その後も軸がぶれることなくいけた。そして社外へ下請けに出していたら手にすることはできなかったであろう、新しいことを学ぶことができた。