既存ビジネスに後発で参入して成功するにはどうすればいいか。起業家のポール・ホーケンさんは「あなたがビジネスを始めるならOKラインを上げる人になるべきであって、後から追いかける人になってはいけない。顧客の観点から、商品やビジネスの仕組みを念入りに観察し、『この点は改善できる』と思うリストをすべて書き出して実行するといい」という――。
※本稿は、ポール・ホーケン『ビジネスを育てる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
次にやるべきビジネスが「銀行」である理由
ある取材で、「次やるとすればどんなビジネスを?」と聞かれたので、「銀行」と答えた。
あなたがどう思っているかわからないが、少なくともぼくは、行き届いたサービスを提供してくれる大きな銀行を知らない。同じ窓口担当が3カ月以上いた試しがないし、心の底からぼくのことを信用してくれる銀行マンにお目にかかったことがない。
7年前、カール・シュミットはユニバーシィティ・ナショナル・バンク(UNB)をパロアルトで開業した。
UNBで口座を開くためには、すでに口座を持っている顧客からの推薦が条件だ。あるいは、徹底的な信用調査を受ける必要がある。ただし、一回この洗礼を受けて口座を開設したのちは、高い信用を勝ち取ることができる。
通常、銀行から電話がくるのは小切手が不渡りを出してしまったときくらいだが、UNBはこまめに連絡をしてくれる。行内のテーブルの上にあるペンは鎖でつながっていない。ロビーでは無料の靴磨きサービスが受けられるし、トイレは快適。
夏にはワラワラスイートオニオンと呼ばれる、辛味がまったくなく、とっても甘くてジューシーな玉ねぎが配られる。もちろん、無料だ。
時期がきたら「玉ねぎが届いてますよー」と電話連絡が入る。行員は顧客の顔と名前を覚えている。顧客は顧客で時に行員にちょっとしたプレゼントをあげたり、何かと相談に乗ってもらっている。離職率はごくわずかだ。