洋菓子店の倒産が増えている。帝国データバンクの調査によると、「街の洋菓子店」の倒産件数が今年1月~5月に過去最多を記録した。生活史研究家の阿古真理さんは「自店の特徴をアピールし、良質な商品を作り続けている店でなければ、生き残りが難しい時代になっている。その背景として5つの要因が考えられる」という――。
いちごのショートケーキ
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洋菓子店の倒産件数が過去最多ペース

タピオカミルクティーの爆発的ブーム、マリトッツォ、バスクチーズケーキ、スコーン、ポップコーン、高級かき氷、ドーナツ、りんご飴、パフェ、グリークヨーグルト……ここ数年を振り返るだけで、いろいろなスイーツが流行している。

しかし、帝国データバンクが6月7日に発表した「『洋菓子店』の倒産動向調査(2024年1-5月)」によると、「街の洋菓子店」の倒産件数は今年1~5月、過去最高の18件も発生した。倒産は閑散期の夏以降に増えやすいため、今年は過去最多を更新する可能性があるという。なぜスイーツは人気なのに、洋菓子店は次々と倒産してしまうのか、要因を掘り下げてみたい。

考えられる要因は5つ。1つ目は、物価高。帝国データバンクの発表記事によると、洋菓子の原料のほぼすべてが値上げされたが、商品価格に転嫁するなどの対策をあきらめ倒産した店が多かった。バターが2007年、2014年に品不足で大きな話題になったことをご記憶の方もいるだろう。その頃から、原料価格は上昇し始めている。

しかし、デフレが長すぎた日本では、経費が上がったからと商品価格を上げれば、客離れが起きる恐れがある。町の商店は、客の顔が見えるだけにかえって上げにくい場合もあるだろう。最近やっと、デフレが所得の低さや経済の低迷を招いてきた、と問題意識が共有され始めたが、それでもまだ、現場レベルでは価格を上げるリスクは大きいようだ。適正価格でモノが売れないと、売る側は商品の質を下げる、量を減らす、人件費を減らす、あるいは一部の洋菓子店のように、経営を圧迫されて倒産に向かうしかなくなる。

「小腹を満たす甘いモノ」のライバルが増えた

2つ目の要因は、ライバルの増加だ。よく言われるのが、コンビニスイーツの人気。2009年にローソンがプレミアムロールケーキを発売して以降、大手各社がスイーツの開発に力を入れ、洋菓子店の脅威になるほど質を上げた。また、シャトレーゼなど大量生産でコストを抑えた洋菓子チェーン店もある。

最初に挙げたスイーツのラインナップを、もう一度確認してほしい。流行するスイーツには、洋菓子店が扱わないジャンルが多くないだろうか? これらのスイーツの中には、専門店が次々にできて流行が拡大したモノも多い。2019年に大ブームとなったタピオカミルクティーもその一つだ。つまり、小腹を満たす甘いモノの製造・販売業者の幅が広がり、目新しさからブームになるなどしていることが、古参となった洋菓子店に人が行く機会を減らしているのだ。