雑談の達人は「自分が話す番」を最大限生かす

この型は、相手から持ち出された話題を発展させたい時にも有効です。ハイキングなどのアウトドアスポーツ好きを対象とした見本市で、参加者同士の交流イベントが開かれたとしましょう。「どうしてここにいらっしゃったのですか」と話しかけられたら、こう答えられるはずです。

「もう何年もハイキングを趣味にしています(何)。けがをせずに長くハイキングを続けたいので、ここで最新の装備やツールを探せると聞いて楽しみにしていました(それが何)。あなたもアウトドアによくお出かけですか(それで何)?」

疑問符の吹き出し
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「何――それが何――それで何」の型は会話の糸口として便利ですが、雑談力を必ずしも最大限に高められるわけではありません。

雑談の達人になるには、話し手と聞き手という両方の役割に気を配る必要があります。雑談とは、参加者たちが代わる代わる口をはさむ会話に他なりません。こうした一連の会話は、話題の変化に伴って話し手が交代するタイミングによって細分化できます。

雑談を盛り上げていくには、自分が話す順番を最大限に生かす必要があります。達人への近道として、私が「雑談の第一の掟」と呼ぶ次のことを心がけてください。

“主役は相手”と常に意識したほうがいい

「賢くておもしろい人間だと思ってもらわなければ」
「この場を取り仕切らなければ」

そう思い込む人はたくさんいます。すると、会話を支配しようと張り切るあまり、自分のことばかりしゃべってしまいます。たいていの相手はこちらの話を聞きたいと思ってくれているかもしれませんが、それ以上に話を聞いてもらいたいという思いを強く抱えている可能性があります。

こちらが自分語りに没頭すると、うぬぼれ屋で、思いやりがなく、傲慢で、思慮分別に欠けるという印象を与えかねません。「そう思われて結構」と開き直れる人はめったにいないでしょう。

話す順番が回ってくるたびに、自分ではなく、相手を主役に据えましょう。受け答えは学問上、「相手をサポートする返答」と「自分の話題へとシフトする返答」の2種類に分けられます。

上の階の住人がうるさいと友人がこぼした時、「それなら、うちの近所のひどさはもっと信じられないと思うよ。昨晩のパーティーは午前3時過ぎまで続いた」と答えたりするかもしれません。

あなたはこの時、相手にもっと話してもらう機会を作らずに、会話のボールを奪い返しています。相手をサポートするなら、共感の言葉をかけたうえで、具体的にどのような迷惑を被り、どう対処したのかを質問しましょう。