初対面の人とうまく会話をするにはどうすればいいのか。スタンフォード大学経営大学院で講師を務めるマット・エイブラハムズさんは「会話には『型』がある。それを活用すれば雑談力を高めることができる」という――。(第1回)

※本稿は、マット・エイブラハムズ『Think Fast, Talk Smart』(翔泳社)の一部を再編集したものです。

オフィスで話をする2人のビジネスマン
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会話の「型」を生かせば、雑談力は高まる

人脈作りや社交の場では、会話力がとことん試されるため、尻込みする人も少なくないでしょう。次から次へと相手を変えての世間話にまったく気乗りしない時もあります。会話の最中でも、ほとんどの人は何をどう言うべきか考えあぐねています。

賢くておもしろい人間だと印象付けたくても――立食パーティーであれ、社内の集まりであれ、仕事関連の交流会であれ、子どもの学校行事であれ――相手とのやり取りがテニスボールの果てしない打ち合いに思えてしまうかもしれません。

そのような感覚は変えられます。認知の仕方を変化させ、便利な型を活用し、いくつかのコツを頭に入れておけば、何気ない雑談にうまく対処できるだけでなく、会話を心から楽しめるようになります。

雑談なんて取るに足らないことのように思われるかもしれませんが、時に重大なインパクトをもたらします。

第一に、思いがけず共通の関心ごとが見つかるきっかけとなり、相手との関係を新たに築いたり、深めたりできます。

第二に、相手との関係をもっと先に進めていきたいか見極める機会となります。

第三に、親切な態度で思いやりを示すことで、友人や同僚から好感を集めたり、自分に対する評価を上げたりできる可能性があります。

最後に、あなたが仕事やプライベートで心に抱いている目標を分かち合える仲間を見つけ出すのに役立ちます。これだけ理由があれば、気後れしている場合ではなく、雑談力を高めるしかありません。話の構成を意識することが第一歩です。

「何――それが何――それで何」の型で会話が生まれる

堅苦しくない会話で私がよく使う構成は、本書(第5章)で紹介した「何――それが何――それで何」の型です。

まず、意見や重要ポイントを明らかにします(何)。次に、その情報の重要性を説明し(それが何)、新たな知識に基づく行動を相手に提案します(それで何)。

応用範囲が広く、融通を利かせやすいため、雑談にうってつけの形式です。しかも、最後の部分を使って相手に問いかけると、その人に対する共感や関心を示せます。この型自体については第5章で説明済みですので、雑談への応用方法をさっそく見ていきましょう。

「何――それが何――それで何」の使い方は2つあります。まず第一に、会話を始めたり、続けたりしたい時に、3つの質問を相手に投げかけられます。

例えば、「今日の基調講演についてどう思いましたか」(何)と尋ねます。相手から答えが返ってきたら、「講演の内容がすぐにどう役立つと思いますか」(それが何)と問いを重ねます。

会話が思いがけず興味深い方向へと脱線したら、「何――それが何――それで何」の形式を離れて構いません。ただ、会話の勢いが失われてきたら、「この後予定されている講演者との交流会に参加しますか」(それで何)と、3つ目の質問に立ち返ることができます。