キーエンス社員はなぜ高い成果を出せるのか。元キーエンス社員でアスエネ共同創業者の岩田圭弘さんは「キーエンスの成果を支えているのは『仕組み化』だ。仕組み化には4つのステップがある」という――。

※本稿は、岩田圭弘『仕組み化がすべて』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

チーム全体の成果を出すための仕組み化「4つのステップ」

日本の製造業の衰退が叫ばれる中で、「営業利益率は脅威の55%超」「売上高1兆円に満たないながらも、日本の時価総額ランキングで第5位にランクイン」と言われ、キーエンスは目覚ましい成果を上げる企業として注目を浴びています。その成果を支えているのが「仕組み化」です。

組織全体の成果向上のために、マネジャーは仕組み化を推進し、チーム全体での成果を最大化することを優先すべきです。それは、仕組み化により、部下の実力を引き上げ、チーム全体の成果を倍以上にすることが可能だからです。

それでは、チーム全体の成果を出すための仕組み化は、どのようなステップで実現できるのでしょうか。それは「標準化」「浸透」「振り返り」「責任と権限」の4ステップです。一つひとつ見ていきましょう。

団結とチームワークのコンセプト
写真=iStock.com/filadendron
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ルールを作り、浸透させていく

STEP1 標準化――全員の行動を一緒にする

仕組み化において最初に行うべきは標準化、つまりルールづくりです。課題を解消するための対策を考え、それを仕組みとして言語化することが肝心です。この言語化されたルールがなければ、メンバーの各人が何をすればいいのかわからないからです。

ただし、ここで言う仕組み化は、単なるルールづくりだけではありません。ルールを浸透させ、理解してもらい、責任と権限を委譲することまでの、組織へのインストールの方法も含んでいます。標準化はその中の第一歩となります。

標準化において重要なのは、ルールを明文化することです。しかし、その前に課題を明確にし、その課題に対してどのようなルールを設定するのが適切なのかを考える必要があります。仕組み化はあくまで問題解決のためにあるのです。

意味のあるルールにするためには、目的を伝えることが重要です。キーエンスでは、必ず目的を浸透させることから始めます。目的のないルールは守られなくなったり、「なぜこれをやるのか」という疑問を生じさせたりしてしまいます。ルールを明文化することも大切ですが、その目的をしっかりと伝えることがポイントなのです。

目的を明確に示すことが必要不可欠

メンバーに納得して実行してもらうためには、目的を明確に示すことが必要不可欠です。そのためには、何の課題に対して何をするのかが論理的に整理されていなければなりません。

また、社会情勢の変化に伴い、ルールも変えていく必要があります。当初の目的から現行のルールがズレていないかを確認するためにも、目的を中心に置くことが重要です。

そもそも、仕組み化の第一歩が標準化である理由は、仕組みを作るための基準を確認する必要があるためです。基準に基づいた仕組みであれば、違和感を覚えずに行動に移すことができます。社会的慣例に基づいた法律でなければ、遵守する意義を見出せないことに似ています。

以上のように、仕組み化において標準化は非常に重要な役割を果たします。課題解決のために適切なルールを明文化し、その目的をしっかりと伝えることで、メンバーに納得して実行してもらうことができます。