「こんなはずじゃなかった」と後悔したくない

⑥ 中心静脈による栄養補給

太い静脈に点滴チューブを通し、十分なカロリーと栄養を入れることです。太い管を入れるため、肺や血管を傷つけたり、感染を起こす危険があります。また、胸水や腹水を増加させ、気道分泌や尿量を増やし、かえって生存期間が短くなることがあります。

⑦ 点滴による水分補給

皮下輸液といい、皮膚の下の血管がないところに生理食塩水を点滴します。施設や自宅でも実施可能で、通常、数週間以内に、ほぼ自然な状態で最期を迎えます。

高齢の親が入院するときや老人ホームなどへの入所の際、延命治療に関する「意思確認書」や「事前指示書」などの書類への記入、署名を求められた経験をもつ人もいるのではないでしょうか。

ある日突然選択を迫られ、よく分からないままに署名をしてしまうと、本人は「こんなはずじゃなかった」、家族は「これでよかったのだろうか」と自分を責めたり、病院や施設への不信が募ることにもなりかねません。

エンディングノートに本当に書くべきこと

また、体力を回復するまでの一時的な胃ろうの造設を、「延命治療はいらない」とかたくなに拒否して医療者を困惑させるケースもあります。一方、高齢の親の死期が近づいてきたとき、病院側に「延命治療はせずに安らかに死を迎えさせてあげたい」と伝えていた家族が、「心臓マッサージもしてもらえなかった」とか、「点滴もしてもらえず可哀想だった」と医師に怒りをぶつけるケースがあります。

延命治療はときに患者の負担や苦痛を助長することがあります。医師と患者側の延命治療に対する認識の違いや情報の格差を埋める作業が必要です。そのためにも延命治療についての情報を共有し、普段から家族で話し合い、意思を確認しておきましょう。

そのうえで、エンディングノートや事前指示書には、前述のように大きな方針だけ示しておき、「その時点で説明を聞いたうえで判断します」と一文を入れておいてもよいでしょう。「私が判断できないときは○○に決定を委ねます」と、信頼できる人の名前を入れておくと安心です。