群馬県みなかみ町の小学校で、70代の男性医師が、本人や保護者の合意を得ずに、児童の下半身を視診していたことが、問題になっている。医師の大脇幸志郎さんは「男性医師は『視診しなければ診断を誤る』と話しているようだが、理解できない。そもそも学校健診の大半はエビデンスがない」という――。

男性医師が下着の中を覗いて「陰毛」を確認

群馬県みなかみ町の小学校で実施された健康診断において、複数の児童が男性医師に下着の中を覗かれたと訴え、問題になっています。

この学校医は児童に対して、保護者の同意なく「陰毛があるか」などの視診を行っていました。

男性医師が下着の中を覗いて「陰毛」を確認
写真=iStock.com/peepo
男性医師が下着の中を覗いて「陰毛」を確認(※写真はイメージです)

批判を受け、地域の教育委員会は保護者説明会で謝罪、学校医は交代するとしています。

報道によると、医師はあくまで善意で、医学的な必要があると考え視診を行ったようではあります。ただ、少なくとも事前の説明と同意が不十分だったように思われます。

プライバシーが重視されるいまの時代、医師の側には診察を受ける人の羞恥心への一層の配慮が求められています。

文部科学省は「原則着衣」と指示している

今年1月、文部科学省から出た通知では、「児童生徒等のプライバシーや心情に配慮」という言葉が繰り返され、「検査・診察時の服装については、正確な検査・診察に支障のない範囲で、原則、体操服や下着等の着衣、又はタオル等により身体を覆」うことと指示されています。

ただ筆者はこの通知に強い違和感を持っています。着衣を指示したからではなく、「正確な検査・診察に支障のない範囲で」という条件が当たり前のように入っているからです。

そもそも、「正確な診察」とは何を指すのかが明確にされていません。

どんな診察方法でも、どんな検査を使っても、病気ではないのに病気があると判定してしまう(偽陽性)とか、病気があるのに見逃してしまう(偽陰性)といった「誤り」はゼロにはなりません。