「検査結果が間違っている」ことはよくある

ゼロではないどころか、「よくあること」です。

比較的優秀とされる検査でも、偽陽性や偽陰性が数割程度も発生することは珍しくありません。

有名な例では、新型コロナウイルスのPCR検査は感度が70%程度。つまり感染している人の30%は検査を受けても見逃されるのです。

まして医師の肉眼による視診は個人的技能に大きく依存します。もちろん熟練した医師が条件を整えて行う診察のほうが、そうでない場合より「正確」かもしれませんが、イメージで言えば「30%の見逃しを27%に減らす」といった程度がいいところでしょう。その程度の小さい違いのためにどんな代償を求めるかは合理的に考えるべきです。「正確」という言葉は「完璧」「絶対」を連想させますが、現実はほど遠いのです。

こんな言葉が使われること自体、文部科学省や医師の側が、診断について誤ったイメージに基づいていることを示しているように思います。

「検査結果が間違っている」ことはよくある
写真=iStock.com/kuppa_rock
「検査結果が間違っている」ことはよくある(※写真はイメージです)

「早期発見」に効果があるかわからない

そもそも健康診断の目的は「正確な診断」ではありません。

よく小説やマンガで予知能力を持つ人物が登場して、悪い予言を聞いた人が予防策を打ってもけっきょく予言のとおりになってしまう、という展開がありますが、診断にも似たところがあります。

診断して「病気」を発見したものの、それがいい結果につながらず、むしろ悪い結果をもたらすこともあるのです。

「病気」の中には強いて治療しなくても困らないもの、発見したところで治療法がなかったり、治療してもあまり効果がないものもあります。

診断によってそういう「病気」を見つけたところで、あまり意味がないのです。目的は早期発見・早期治療によって悪い結果を減らすこと、特に死亡を減らすことです。

冒頭の例ではSNSで「思春期早発症を見つけようとしているのではないか」という憶測が出回りましたが、調査によれば小学生の年齢で診断される思春期早発症は全国で1000人程度と、比較的まれな病気です。その中でも「その方法でしか診断できず(年齢不相応な身長の伸びなどがはっきりせず、かつ、年齢不相応な陰毛があり、かつ、本人が気付いていないか質問しても答えてくれない、かつ、視診には同意する)」かつ「その時点での介入により悪い結果を防げる」例となるとさらに少なくなります。

そもそも思春期早発症による悪い結果というのはたとえば成人したときの低身長ですが、低身長でも不自由なく生活している人は大勢いますし、ホルモンの異常による低身長に対して薬物治療がどんな利益になりえるかは議論があるところです。