4月26日にオープンした「渋谷ヒカリエ」が人気である。東京の新名所「東のスカイツリー、西のヒカリエ」として話題を集めている。どんな仕掛けで人々がこの一大商業施設に吸い寄せられるのだろうか。
4カ月で1千万人が来店した渋谷の新しい顔
長引く不況に挑戦するように、近年、商業施設の開発で、「大規模化」がみられる。銀座三越や大丸東京店の増床、ダイバーシティ東京プラザ、東京ソラマチ、そして渋谷ヒカリエの新設である。現下のような不況期に、このような巨額投資は、「無謀」とも映るが、逆に元気のない日本でこのような「攻め」の姿勢には、逞しさを感じる。「攻め」の取り組みの中でも秀逸なものに、渋谷ヒカリエがある。本年4月26日に開業したこの施設は、渋谷文化の発信のシンボルとなっていた東急文化会館の跡地に建設された。
創業者の五島慶太は、当時の人々の滞留時間が銀座は45分であるのに対し、渋谷は5分弱でしかないことを嘆き、渋谷の魅力を発信する方策を考えた末に出来上がったのが東急文化会館だった。この施設は、プラネタリウム、スクリーンを3つも備えた映画館、結婚式場等を擁し、昭和30年代としてはまさに最先端の複合施設だった。
渋谷ヒカリエは、この東急文化会館のDNAを引き継ぎ、渋谷文化の創造と情報発信を行うというコンセプトのもとに誕生した。1972の客席数を誇るミュージカル劇場「東急シアターオーブ」、クリエイティブスペース「8/(ハチ)」、イベントスペース「ヒカリエホール」、百貨店の進化業態といえる「ShinQs」、そして17階から34階までを占めるIT企業、コンテンツ企業のオフィスフロアがそれを端的に示している。渋谷はかつて「ビットバレー」と称されたようにIT関連の企業が集積し、新しい文化の創造や情報発信を行ってきた。今、オフィスフロアには、DeNAやNHN japanなどの著名ITベンチャーが入居し、その気風をしっかりと継承している。
渋谷ヒカリエへの来場者数は、全館で年間1400万人を見込んでいた。ところが、本年8月末時点ですでに1000万人を突破し、当初の予想を大幅に上回るペースで伸びている。商業施設のShinQsも、初年度の売上高予想を180億円としていたが、本年10月時点で計画比20%増の勢いである。無論、本年4月に開業したばかりで、いわゆる「開店人気」が影響しているのは間違いないとはいえ、この実績は素晴らしい。このような高成果は、どのようにして実現できたのだろうか。