「自己編集能力」のある高感度な女性をターゲットに据える売り場。生活空間を改善できる“Zakka”が美しく陳列されている。

今日、生活空間の改善を求めるニーズは一般に強く、その面に特化すれば「個性」を打ち出すことが可能である。もともとShinQsでは、「自己編集能力のある女性」をターゲットにしているので、素材提案だけで事足りるのだ。彼女たちは、自分なりの感性やテイストをしっかりと持ち、鋭い選択眼を持っているので、商業施設サイドは適切な素材を提供し、彼女たちのチョイスをサポートするだけでよいのである。

ただし、感性レベルの高いこのような顧客には、ビジュアリティも重要な要素になる。どの場所にどのようなテナントを配置するかというゾーニングの意思決定が重要になるのだ。ShinQsでは、この点に関して、外部の専門家に任せることなく、すべて自前で決めており、ビジュアリティにも最大限の気配りを見せている。3階と4階は、基本的にアパレル売り場だが、見え方を重視して、エスカレーターサイドにはアパレル品を置かず、雑貨を陳列している。これはアパレルテナントのように、いきなり壁のある店舗を配置してしまうと、消費者は圧迫感を抱くからだ。エスカレーターサイドに雑貨を配置するのは、エスカレーターを上がってきた顧客に広い視界を確保し、不快な閉塞感を除去するための工夫なのだ。

商業集積では、どのようなテナントを集めるかということが、顧客の獲得上極めて重要な課題になる。ShinQsでは、およそ200の魅力あるテナントを集積させているが、それらはどのようにして集められたのだろうか。

テナントの選定にあたって、ShinQsでは、準備室という情報の窓口と本社のバイヤー、そして従来からテナント運営に携わってきたテナント統括本部が一体となって協議した。候補となるテナントに関しては、バイヤーが常日頃情報収集しており、気になるテナントの業績推移をトレースしている。また、準備室でも市場調査にはかなり時間をさいており、「このターゲットならばこういうテナントがいいのでは」、あるいは「地方では今こういう店が注目されている」といった情報を収集してきた。こうして入手された情報をもとに協議が行われ、そこで決した事項を月1回、野本弘文東急電鉄社長の出席する場で答申する。その場では、社長から「それはスパークメントなのか」という厳しい「だめ出し」がなされたという。