自分の型を持ち「成果」を最小限の力で出す弊害

「睡眠圧」という言葉を初めて聞いた方もいるかもしれません。

私は今まで多くの50代を「睡眠不調」から「快眠」へと導くサポートを成功させていますが、その中で最も効果が高く、きわめて重要なのが、この「睡眠圧の向上」だと断言できます。

多くの人は50代になると、良くも悪くも「自分の型」ができます。また自分の得意、不得意なことも分かってきて、得意なことに集中するようになります。

そうすることで「失敗」を防ぎ、「ストレス」を減らし、「成果」を最小限の力で出すことができるようになるのです。50代が体力や熱量の高い若い世代より、価値を生み出して生きていくためには、当然の生存戦略だと思いますし、私もそうしています。

ところが、この「自分の型」を持ってしまった弊害として、「生活パターンが同じ」「選ぶものや判断がいつも同じパターン」といった、脳にも体にも刺激が少ない生活を送りがちです。

ここには大きな落とし穴があり、実はこの人生の効率化ともいえる日常の最適化こそが、睡眠を悪化させている最大の要因なのです。

脳も体も、いつもと同じで特に新しいことを吸収していないので、睡眠時間や深い睡眠が必要なくなるのです。

もちろん、自分の仕事や趣味で新しいことを学んだり、実践しているとは思いますが、それは脳や体にとっては、もはや「新しいこと」と認識されないレベルになっているのです。

ですから、50代になって本当に良い睡眠を得るためには、新しいことを始める必要があります。50代になってからの新しい刺激が、20~30代と変わらない質の高い睡眠、スッキリした目覚めを生み出すことを覚えておいてください。

「睡眠」と「日中の活動」は「陰陽」の関係

これは非常に大切な考え方なので、ぜひ一生覚えておいてほしいことなのですが、「睡眠」と「日中の活動」は生物における基本であり、互いに独立しているものの、依存しあいながら影響を与えあっています。

簡単な言い方をすると、「睡眠」によって「日中の活動」が作られる、また逆に「日中の活動」によって「睡眠」が作られる……というシンプルな考えです。

ですから、良い睡眠をすれば、心身が回復して良い状態が作れるので、日中に活動的で新しいことにチャレンジできるわけです。

また、活動的で新しいことにチャレンジする日中を過ごすと、睡眠圧が上がり適度に負荷がかかり、回復のために寝つきの良い深い睡眠ができるというわけなのです。

多くの50代はこの反対のパターンになっています。

ちなみに、「睡眠圧」という言葉は、私が作った造語ではなく、睡眠学の学術用語です。

本来の意味は「長時間起きていることや、活動することで、睡眠物質がまること」となっています。つまり、長く起きて活動すればするほど、深い眠りに入れますよという意味です。

よく下のような図で表されています。

睡眠圧を上げる実践法には大きく分けて3つあります。

①新しいことを1日1つ以上行う
②体に強い負荷をかける習慣を取り入れる
③脳に強い負荷をかける習慣を取り入れる

ただし、「①新しいことを1日1つ以上行う」はかなりハードルが高いでしょう。もちろん、実践できればベストですが、本書ではこれに代わって「朝の目覚めスイッチを入れる方法」をお伝えします。50代は夜型から朝型に移行する年代なのですが、朝に目覚めスイッチが入らないことによる不調が多く見られるからです。