「うつ病」と間違いやすい病気がある。医師の中村有吾さんは「たとえば、男性更年期障害では、『気分の落ち込み』といったうつ病特有の症状が出る。抗うつ薬・抗不安薬を飲み続けて、症状が悪化するケースもある」という――。

治療を続けているのに余計に症状が悪化…

食品メーカーに勤める千葉県在住の50代の男性(Aさん)は、やる気の低下、気分の落ち込みに悩まされ、心療内科を受診し、「うつ病」と診断されました。

治療が始まり、抗うつ薬・抗不安薬などを服用していましたが、回復するどころか、記憶力や集中力の低下さえ感じるようになりました。

仕事のミスが増え、上司に怒られることもしばしば。イライラがつのり、部下や奥さんにも怒りをぶつけてしまったりと、以前のAさんとはほど遠い状態に、自分でも困惑するほどでした。

薬を持つ人
写真=iStock.com/Prostock-Studio
抗うつ薬・抗不安薬で、余計に症状が悪化……(※写真はイメージです)

産業医との面談で告げられたこと

うつ病と診断されてから1年が経過。とうとう出社も困難になったため、Aさんは辞表を提出することになりました。

退職する直前、会社の産業医と面談する機会がありました。その時、産業医が言い放った一言に、Aさんは衝撃を受けたのです。

「Aさんはうつ病ではないかもしれません。一度くわしく調べてみるといいでしょう」。

Aさんは心療内科の診断を信じていました。また、「気分の落ち込み」といったうつ病特有の症状が続いていため、うつ病という診断を疑ったことはありませんでした。