「タンパク質のとりすぎ」&「糖質の控えすぎ」が実に多い
出前を頼むとしても、判断力と行動力、経済力、人と関わる意欲、コミュニケーション能力など、実にたくさんのパワーが必要です。
80代、90代の方から「孫が遊びに来るから、上等なステーキを食べに連れていく」「土用だからいつもの店からうな重をとる」などと聞くと、私はうれしく、うきうき、食欲がわいてきてしまう。ずっとそのように、しっかり食べてこられたのがわかって、尊敬の気持ちでいっぱいになります。
健啖家は、一朝一夕にして成らず。すこやかな食習慣の賜物なのです。
ところが最近、健康を守ろうと思ってしている食生活が「偏食」に傾き、栄養が偏ってしまう状態をまねいている中高年が増えています。
とりわけ目立つのは「タンパク質のとりすぎ」と「糖質の控えすぎ」の重なり。
この困った現象は、次のような情報がマスコミなどからたくさん発信されることで、みなさんの記憶に刻まれていることが原因のようです。
・糖質をとりすぎている人が多く、肥満の原因になっている。
・糖質のとりすぎで起こる「糖化」「炎症」は多くの病気の原因になっているので、糖質を控えたほうがいい。
太りたくないからと「納豆、小魚、刺身」生活を続けていたら…
確かに、それぞれの理屈は間違いではありません。こうした情報が盛んに報道される背景にも、理解できる面はあります。
しかし、これらの理屈だけに着目し、タンパク質ばかり食べすぎ、糖質を控えすぎてしまう人が増え、偏食になって、体調に影響が出ています。
そのような食べ方では結果として、期待した「筋肉アップ」や「健康」にはつながらないことがあるとは知られないまま、「タンパク質増」「糖質オフ」だけが知れ渡っているのです。
先日、初老の女性が話しかけてくれました。
「朝や昼にはたまごを食べて、納豆や小魚を食べて、もうそれでお腹いっぱい。夜は刺身と豆腐を食べたら、主食のごはんは食べられない。でも、年をとったらタンパク質が大事で、ごはんは食べなくてもいいんですよね。筋肉を減らさないように、がんばっています」と。
そこで私は念のため、「あなたは、その食事がおいしいですか?」とうかがってみました。すると、「本当はごはんと一緒にお魚を食べるほうがおいしい。でも我慢しています。タンパク質を食べたら、食べられないから」というお返事でした。
聞けばご主人にもタンパク質優先で食事を出しているそうで、長年、「低脂肪の食事」も心がけてきたそう。おかげで夫婦そろって痩せ型で、メタボとは無縁でした。しかし、さらに体重が落ちてきたので、ちょっと心配になってきたとのことでした。